研究課題/領域番号 |
23686052
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八井 崇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80505248)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドレストフォトン / 粒径制御 / エネルギー変換 / 光プロセス |
研究概要 |
ナノフォトニックデバイスを高効率に動作させるためには、QDの粒径制御が重要となる。ZnO QDの合成法として,ゾル・ゲル法が利用されているが、この時、得られるQDの粒径は、温度ゆらぎによって決まる粒径のばらつきが発生する。そこで、QDに発生するDressed photon (DP)を利用したQDの粒径制御技術の開発を行った。 微細構造にバンドギャップよりも低い光子エネルギーの光を照射することで、微細構造周囲にDPを発生させる。このときDPは物質中のフォノンと結合し、DPP状態が作られる。DPPは従来励起不可能である光学禁制準位であるフォノン準位を励起可能となる。その結果、このフォノン準位を介した多段励起が可能となるため、バンドギャップ以下の低い光子エネルギーでも化学反応を引き起こすことが可能である。本手法では、小さい寸法の構造に反応するDPP援用過程を利用することで、寸法の小さいZnO QDの成長が促進されるため、ZnO QDの成長に伴い粒径分布の減少が期待される。 通常のゾル・ゲル法に加えて結晶成長中に援用光としてλ=671nmの半導体レーザを照射した。援用光を照射しながら作製したZnO QDは従来手法と比較して、7日間成長させた場合の寸法は4.6nmから4.8nmへと増大されたことがわかった。 次に、TEMによる画像解析を行った。その結果、援用光照射なしの通常成長によって得られたZnO QDの粒径である3.1nmであるのに対して、援用光を照射して成長したZnO QDの粒径が3.6nmと大きくなっていることがわかった。また、それぞれの粒径分布の半値幅は0.88nmと0.79nmであり、半値幅から求められる粒径のばらつきも28%から21%へ改善されていることがわかった。また粒径分布の解析から、粒径の小さいZnO QDの成長が選択的に促進されたことを裏付けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドレストフォトンフォノンを取り入れた全く新しい結晶成長法を開発することに成功したため。 ZnO QDの従来の合成法であるゾル・ゲル法と比較して、粒径の大きいQDの成長を停止する光エッチングの手法では、粒径の小さいQDの成長を促進することができず、粒径のばらつきを大幅に低減することは未達であった。それに対して、今回発見したドレストフォトン援用ゾルゲル法により、粒径の小さいQDを選択的に成長させることが可能であることが明らかになり、その結果、ZnO QD寸法のばらつきを当初の予定を上回り大幅に低減することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
ドレストフォトンフォノンP効果の理論的考察を深め、粒径制御の限界について検討を行う。 作製したQDを用いて、フォノン援用による自己組織的な配列手法の開発を行い、高効率なエネルギー変換デバイスとしての性能を評価する。
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