研究課題/領域番号 |
23686054
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小寺 敏郎 山口大学, 大学院・理工学研究科, 講師 (90340603)
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キーワード | ジャイロ磁気特性 / 進行波共振 / 非可逆特性 / 人工磁性体 / マイクロ波デバイス / 希土類代替技術 / ミリ波デバイス |
研究概要 |
当初の計画ではマイクロ波非可逆素子に不可欠な希土類磁性体の代替手段として、(a)単向性デバイスを含む進行波共振構造により人工的にジャイロ磁気特性を作り出し、これをマイクロ波帯域において人工磁性体として用いる研究(b)コバルト・鉄・ホウ素により構成される磁性体ナノワイヤに関する研究を平行して進める予定であったが、(b)についてはマイクロ波・ミリ波デバイスで使用可能なレベルまで磁気損失を低減することが困難であると判断し、テーマ(a)に集中して研究を進めた。 テーマ(a)は単に従来の希土類フェライト材料との置換であるのみならず、バイアス磁界生成磁石が不要であることから小型化、軽量化、低コスト化を同時に実現するものである。更に一般的に磁石は入射電磁波を反射あるいは減衰させるものであるが、これが不要になることより透過電磁界の偏波面にファラデー回転を与える電磁境界面が可能となり、従来技術では不可能な新規デバイスの実現も期待できる。 具体的研究成果として、人工磁性体が従来の磁性体と同様に (1)人工磁性体が伝搬電磁界の偏波面に対してファラデー回転を与え、これにより磁気光学カー効果が得られる。 (2)人工磁性体を含む導波構造において、電磁界が局在する。 ことを理論・実験両面から明らかにした。 これらの結果を踏まえた応用として (3)磁性体を全く含まない完全電気磁気導体 (4)非可逆性を有するビーム走査可能なマイクロ波アンテナ を実現し、全ての結果を論文発表した。(査読付学術論文2報、査読付国際会議4報、海外特許1件) 更に現在新しい動作原理に基づくマイクロ波アイソレーターの開発と人工磁性体によるサーキューレーターの開登を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では23年度後半に開始する予定であったデバイス応用を前期のうちに着手することができ、既に5種類以上のデバイスを作成している。当初は基礎特性の理論解析と定式化に時間を要すると計画していたが、この内容についても既に解決済みで、論文投稿中となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の進行波共振回路において波動の単向性をFET(電界効果トランジスタ)により実現している。FETは非線形素子であり、相互変調歪み(IMD),入出力における電力飽和等の問題が現れる。これらの問題は従来のフェライト材料では極めて小さい現象であるため、フェライトの代替を目指す以上は理論・実験で明らかにし、特性限界ならびに特性改善の方策を示す必要がある。現象を十分に把握できた場合、逆に非線形性を積極的に利用した新しいデバイスの開発もあり得る。基本特性の理論的裏付けはほぼ終了しているため今後は非線形特性を中心に研究を推進する。
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