研究概要 |
Cu(In,Ga)Se2 が低コスト・高効率な化合物薄膜太陽電池の光吸収層として大きな注目を集めている。Cu(In,Ga)Se2 太陽電池は20%と高変換効率であるが、材料に希少元素のInとGaを使用しており、またSe を使用するため環境負荷が懸念される。そこで、In とGa を資源が豊富なZn とSn で、Se をS で置き換えたCu2ZnSnS4(CZTS) が大きな注目を集めている。本研究では、変換効率10%の実現を目指す。本年度は、昨年度の課題であったCZTS薄膜のドーム状の欠陥の抑制について検討した。従来はCu2ZnSn合金ターゲットを用いたスパッタ法により成膜したCu-Zn-Sn前駆体膜を、硫黄雰囲気下で熱処理することによってCZTS薄膜を成膜していた。前駆体からCZTSへと反応が起きる際に、体積膨張に起因する応力によってドームが発生すると考えた。この堆積膨張を緩和するために、酸化物前駆体を用いる事を考案し、前駆体のスパッタ時にアルゴンと同時に酸素を導入する事で、Cu-Zn-Sn-O前駆体を形成した。X線回折結果からこの前駆体膜はアモルファスであることがわかった。この前駆体を従来と同様に硫黄雰囲気下で熱処理した。その結果、前駆体に含まれる酸素が硫黄と置換されてCZTS薄膜が得られた。エネルギー分散型X線分析装置で酸素量を測定したところ、検出限界以下であった。また、急激な体積膨張が抑制されたためか、ドームの形成を抑える事ができた。一方、表面側は良好な結晶が得られたが、裏面側では粒径の小さな未反応のような結晶粒が観察された。今後は、前駆体膜の成膜条件とともに硫化条件の最適化を行う事で、太陽電池に適したCZTS薄膜の実現を目指す。
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