研究概要 |
本研究では,心臓の電気的興奮による心筋の収縮の伝播現象などを従来にない高精度で捉えることを目指し,心臓を数百Hzの高時間分解能で超音波イメージングする手法を開発するとともに,そのイメージング手法を実現するシステムを構築する.今年度は(1)心臓の高速超音波イメージング法の開発,および(2)高速イメージングを実現するためのシステムハードウエアの開発を行った.(1)については,心臓のセクタ走査に対応するための拡散ビームについて検討を行い,超音波プローブの素子に印加する信号の遅延時間を制御することで拡散ビームを送信可能であることを理論的,実験的に検証した.実際には,拡散ビームの仮想音源を,超音波プローブ表面から50mm~100mm後方に設定することで心臓の高速超音波イメージングに適した拡散ビームを形成することができることを明らかにした.さらに,受信ビームフォーミング法については,送信拡散ビームの偏向による感度分布の変化を平滑化するため,1本の走査線を形成するために複数回の送受信を重ね合わせる手法を開発した.受信ビームフォーミング法を送信拡散ビームと組み合わせて実際に模擬対象物のイメージングを行い,従来法(フレームレート数十Hz)と同様の空間分解能で316Hzという高フレームレートを実現することができた.(2)についても開発を進め,超音波プローブの96素子の励振を同時に制御可能であり,かつ受信した超音波信号を96素子分標本化して保存可能な超音波送受信ユニットを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画とおり,従来法(数十Hz)よりもはるかに高時間分解能(300Hz以上)の超音波イメージング法を開発することに成功している.また,本イメージング法を実現するためのシステムのハードウエア開発も順調に進んでおり,来年度開発予定の信号処理ユニットの設計について既に検討を始めていることから当初の計画以上に進展していると評価できる.
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