抗原応答性ハイドロゲル形成のため,加水分解率60%のpoly-N-ビニルホルムアミド(ポリ(ビニルアミン-co- N-ビニルホルムアミド))のアミノ基を,無水コハク酸を用いてカルボキシル基に変換した.その結果,同ポリマーを用いてセンサ表面を作製した結果,非特異的な吸着抑制の効果が見込まれた. トリニトロトルエン(TNT)の高感度検出のため,表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)を用いて,表面プラズモン共鳴免疫センサのチップ修飾を行った.ポリマーへのTNT類似物質の固定化のため,カルボキシル基を有するコハク酸1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル(MES)を用いた.カルボキシル基がマイナスに帯電するMESへの抗TNTモノクローナル抗体自体の非特異吸着を抑制するため,三級アミンを有し,プラスに帯電する2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリラート (DEAEM)を混合したポリマーをセンサ表面上に作製し,電気的に中性で非特異吸着を抑制するセンサ表面を実現した.TNTの測定は間接競合法を用いた.TNTの高感度検出のため,2種の自己組織化単分子膜試薬を混合し重合開始剤密度を調整することによって,抗体と表面の親和性を最適化した.その結果,検出限界は5.7 pg/mL(ppt)となった. 次に,MESとメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(MES)を組み合わせ,SI-ATRPによりセンサ表面を作製した.電気的に中性で親水性のHEMAの割合を増やすことにより,非特異吸着の抑制が可能であった.HEMAの割合を増やすと,TNT抗体の結合サイトとなるMESの割合が減少することになる.HEMAとMESの割合を調整し,抗体とセンサ表面との親和性を制御した.センサ表面に結合した抗体をターゲット物質で解離させる置換法により,TNTの検出限界は,0.4 ng/mL (ppb)となった.
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