研究課題
本研究では,リスクマネージメントの観点から二酸化炭素地下貯留,放射性廃棄物の地層処分施設におけるセメント系材料の長期安定性評価を行うことを目的としている.本年度は,CO2注入坑井からのCO2地上漏洩リスクについて実験的な検討を行った.まず,地下の高温環境で坑井の鋼管がセメントペーストの収縮を拘束することによる収縮ひび割れの発生可能性について検討した.その結果,60℃封緘環境でセメントペーストの自己収縮は初期に大きく増大するものの,高温における強度発現により収縮ひび割れは生じなかった.実際には地下水も存在するために,収縮は低減され,収縮ひび割れによるCO2漏洩リスクは低いと考えられた.次に,地下の超臨界CO2下におけるセメントペーストの劣化について複数のセメントを用いて検討した.油井セメントを用いた場合,C3Aが少ないため,高温,高圧環境でも組織構造が破壊されない一方で,普通ポルトランドセメントを用いた場合,微細なひび割れが発生することが確認された.また,主水和生成物のC-S-Hまで炭酸化が進行すると,100nm以上の空隙が増加したため,CO2漏洩リスクが高まると考えられ,100nm以上の空隙増加に着目した透気の検討が今後重要と言える.また,地層処分施設については,セメント系材料のCa溶脱に着目し,複数の既存の数値解析モデルの比較,感度解析を行い,溶脱に支配的なパラメータに関して考察を行った.その結果,Caイオンの溶脱は,いずれのモデルでも境界のCaイオン濃度,周辺温度,初期空隙率の影響が大きいことが分かった.また,細孔中に存在するCa以外の他のイオンの存在を考慮すると,Ca溶脱が抑制された.今後,予測精度向上には,核種の崩壊熱による初期空隙率変化,ベントナイトとの境界面での境界Ca濃度,熱力学的平衡モデルなどによるCa以外のイオンの存在などを検討が重要であることが分かった.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Engineering Computations
巻: vol.30, iss.6 ページ: in press
コンクリート工学年次論文集
巻: 第35巻 ページ: 未定
セメント・コンクリート論文集
巻: No.66 ページ: 95-102