本研究では、現在提案されている多くのひび割れ補修方法のうち、コンクリートのひび割れ自己治癒に効果があると期待される組成物に着目し、そのセメント化学反応機構をひび割れ補修材に応用することで、コンクリート構造物の長期的な信頼性を向上させることを目的としている。1次年度には、地下トンネル構造物のひび割れ補修方法及び橋梁床板のひび割れ補修方法を検討した。無機系材料を用いつつ、無機系補修材料にひび割れ追従性を付与することができれば、ひび割れ追従性と長期信頼性を兼ね備えた新たな補修工法になり得ると考えた。試験施工を行った箇所は、スラブの張り出し部で、ひび割れの長さは3m程度である。また、提案手法を実構造物に適用し、施工後2年間の効果を確認した。2次年度には、大量の漏水がある地下構造物を想定して止水性能とひび割れ自己治癒性能を同時に発揮する材料の開発研究を進行った。地下トンネルや送・排水設備などの構造物における湧水を伴うようなひび割れの補修材料・工法については,多くの場合現場対応であり,指針やマニュアルが制定されていないのが実情である.これらの構造物の補修では,補修時の構造物の損傷度,湧水量,補修方法,施工の適切さなどにより補修効果が大きく異なることから,補修を施しても再劣化が生じやすいことも懸念される.そこで,止水材料の開発と施工した場合の止水効果ならびに耐久性を考慮した止水材注入実験を行い,実漏水状況を想定した枡形試験体の止水実験を実施した. その結果14L/分の漏水場所を一次的に止水することが確認された.さらに,ひび割れ自己治癒材料を止水後塗布して完全に漏水を補修する新たな補修方法を開発することができた。実現場は地下鉄漏水ひび割れを選定し、2ヵ月間止水実験を実施した。
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