研究概要 |
橋梁などのインフラ系構造物の性能を適切に把握することは,設計・管理における不確定性を低減し,また構造劣化診断を可能にするため,効率的な建設・運用によるコスト削減や安全性向上をもたらす.振動計測を利用すると,FEMの精緻化などを通して性能評価が可能と期待されるが,橋梁詳細モデルは全体挙動・部材挙動が複雑に連成し,その双方の把握が不可欠である.そこで,無線センサ技術を,GPS無線ハイブリッド同期と歪計測の観点から拡張し,また非接触遠隔計測技術を組み合わせ,簡易かつ詳細に構造物の全体挙動・部材ローカル振動を同期計測する統合モニタリング法を確立し,実構造系で実証することを目的とした. 平成23年度は1)無線マルチホップ同期計測システムの改良,2)GPS絶対時刻を利用した同期計測の検討,3)無線歪計測システムの構築,4)新型レーザードップラ速度計(LDV)の計測特性の解明に取り組んだ.1)では,マルチホップ環境下での通信速度の最適化と,計測・通信の安定化を図った.2)では,GPSからの時刻信号を利用して,安価に数十ナノ秒程度の精度で,同期計測が可能であることを,シミュレーションを通じて示した.3)では,無線センサネットワーク基板に接続するための歪計測ボードを作成した.4)ではRSV-150を購入し,高精度加速度計,変位計などとともに振動台の動きを計測し,その計測性能を分析した.また,斜張橋ケーブルの振動を現地で計測することで,遠距離から対象物の振動を計測できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた項目をほぼ達成できたが,以下の点については当初の計画通りには進まなかった.まず,同期計測システムの改良では,仕組みの実装をしたものの,その精度向上を定量的に評価するには至らなかった.GPSを利用した絶対時刻への同期では,シミュレーションにより分析を行ったが,無線センサネットワークへの実装には至っていない.また無線歪計測センサボードは作成したものの,計測に基づいた定量的な評価には至らなかった.以上のことから,概ね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,平成23年度に実現できなかった,同期計測システムの定量的評価,GPS同期の無線センサへの実装,ひずみ計測センサボードの評価を行う.次いで,GPS絶対時刻に基づいて,無線センサネットワークとレーザードップラ速度計の同期計測を実現し,実験により同期計測精度を明らかにする. 次に,計測対象の実橋梁を選定し,汎用FEMソフトウェアで詳細にモデル化する.全体挙動を効率的に把握する無線センサの配置や,応力の大きな部材を明らかにし,実構造物系への適用の準備をする.
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