研究課題
17篇の査読付き論文の出版、9件の発表(研究代表者が発表したもののみ;うち4件が招待講演)によく表れているように、極めて生産性の高い年度を過ごすことができた。特筆したい成果としては、水同位体比データ同化の理想実験の成功である。モデルとして同位体大気大循環モデルIsoGSM(Yoshimura et al., 2008)、データ同化手法として局所アンサンブル変換カルマンフィルターLETKF(Miyoshi and Yamane, 2006)を用いた。モデルの1つのリアリゼーションを真値とした理想実験を使い、同位体比データを投入することによる風速・気温といった大気力学場に及ぼす影響を定量化した。その結果、風速や気温が与えられている場合にさらに同位体比データを同化すると、気温や風速を含むすべての変数について解析精度の改善が見られた。また、風速や気温の観測がなく水蒸気同位体比のみを投入した場合には、何も観測データがない場合と比較して、全ての変数において解析精度の劇的な向上が見られた。つまり、水蒸気同位体比場を気候モデルへの制約として与えることにより、水蒸気同位体比場だけではなく、大気循環場が拘束されるということである。もちろん、大気観測において同位体比のみが存在するというような状況は現在においてはあり得ないが、観測史以前の過去にさかのぼると同位体情報のみが存在するということもあり得る。これからクリアすべき課題は山積しているが、同位体データを用いた過去の気候場の復元という命題に取り組むための準備を整えつつある。
2: おおむね順調に進展している
データ同化による研究が進み、論文発表も順調である。
衛星から得られた水蒸気同位体比データを用い、現実的なデータ同化実験を行う。それにより、何が改良されるのか、定量的な解析を行う。また、結合大循環モデルの整備を進め、初期的な結果を出す。プロキシモデリングも必要に応じて進めていく。地表面蒸発散過程での同位体挙動観測については、農環研の真瀬試験水田を利用した観測計画を策定し、生産技術研究所のフラックス観測グループと連携しつつ実行する。また、降水や水蒸気・土壌水分・積雪・河川水等の水素酸素同位体比情報が、吸収・交換・輸送といった様々な物理的・生化学的過程を踏まえてセルロースやサンゴ、石筍、氷床コア等の一部として固定される際の挙動をモデル化する。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 17件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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