これまでに開発した蛍光ナノマテリアルを用いて、環境サンプル(路面排水および工場廃水)中の重金属(Zn)分析を行った。 蛍光ナノマテリアルのZn2+に対する検量線を作成した。検量線を2次関数、3次関数、4次関数で近似したところ、4次関数の決定係数(R2)が0.9996と最も高かったことから、検量線を4次関数で近似することとした。検出限界は1.4×10の-7乗M(9μg/L)であった。この値はZnの環境基準値よりも低く、蛍光ナノマテリアルにより十分に水環境試料や工業水試料中のZnスクリーニングを行えることが分かった。 蛍光ナノマテリアルで測定したZn濃度とICP-AESで測定したZn濃度を比較した。両者の間には傾き1のおおよそ直線的な比例関係がみられた。この結果はたとえ複雑なマトリックスを有する環境試料であっても蛍光ナノマテリアルによりZnを定量できるということを示唆している。測定誤差は溶存態亜鉛で25%以内、全亜鉛で30%以内であった。よって蛍光ナノマテリアルを用いた蛍光分光法により簡易な前処理のみで路面排水中の溶存態亜鉛も全亜鉛も環境基準を超過しているかどうかスクリーニングできることが分かった。 ICP-AESにより、路面サンプル(25サンプル)中の金属濃度を分析した。大部分の試料が環境基準値である30μg-Zn/Lを超過していた。大阪で採取した試料が他の試料より高いZn2+濃度を示した。これは交通量の多さが原因だと考えられる。多くのサンプルで,AlおよびFeの濃度が高く、最高で2600μg-Al/L、3500μg-Fe/Lを含む試料がみられた。pHは全ての試料で7程度であった。ECは大阪の試料で高く、つくばの試料で低い傾向がみられた。この様に多種多様な金属を含む環境サンプルにも蛍光ナノマテリアルは適用可能であった。
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