課題1)ウイルス遺伝子の非特異的増幅技術の開発 次世代シーケンシング法による塩基配列決定の前処理として用いている+鎖RNAウイルスゲノムの非特異的増幅において,ウイルスゲノムの長さにより増幅効率に差があるという課題の解決のため,ウイルスRNAの逆転写反応およびPCRによるcDNA増幅に用いる数種の酵素をもちいて比較実験を行った。2種類の逆転写酵素および4種類の増幅酵素を用いて検討を行い,もっとも効率のよい組み合わせを見いだした。 課題3)ウイルス遺伝子同定技術の実証試験 次世代シーケンシング法を用いてノロウイルスの遺伝子型レベルの変遷を評価する手法を検討した。流入下水試料のノロウイルスGII群の遺伝子をnested-PCR法で増幅し,GS Juniorでのアンプリコンシーケンシングにより塩基配列を取得し,遺伝子型および亜型レベルでノロウイルスを同定した。塩基配列からのノロウイルス遺伝子(亜)型同定に際し,得られた塩基配列群をデノイズ処理することで,不必要なOTUを削除し,効率的にデータ解析を行うことができた。解析の結果,GII群の様々な遺伝子型が検出されたのに加え,既知の遺伝子型との類似度が低い配列も検出された。GII.4型の亜型については,Den Haag 2006b亜型,Sydney 2012亜型が主に検出された。これらのことより,次世代シーケンシング法を用いることで,環境試料中のノロウイルスを遺伝子(亜)型レベルで検出・同定することが可能であることが示された。
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