本年度は、昨年度に屋内実験を通して基本技術を開発した近赤外レーザースキャナと濾紙蒸発法による対流熱伝達率分布の可視化手法に関して、更なる高精度化の改良を行ったうえで、屋外の建物に適用するための研究を実施した。対象建物は、東工大キャンパス内の実験用建物であり、様々な風向・風速条件下での、本手法の有効性と適用範囲を確認した。また、単純形状を有する対象建物の対流熱伝達率分布を可視化し、風向・風速条件との関係を明らかにした。 1)対象建物の壁面において、レーザースキャナによる濾紙面の反射強度計測実験を行い、反射レーザーの入射角依存性、距離依存性、大気吸収の影響を確認し、屋内実験で得た実験式の補正について検討した。 2)前年度に開発した対流熱伝達率分布の可視化手法を、濾紙面の水分ポテンシャルを導入することで高精度化する改良を実施した。水分ポテンシャル測定装置を用い、屋内実験にて、濾紙の含水率と水分ポテンシャルとの関係を定式化したうえで、含水濾紙の反射強度から水分ポテンシャルを同定する実験式を作成した。 3)屋外の対象建物の壁面において、含水濾紙を全面に貼付したうえでレーザー計測を実施し、上記手法により対流熱伝達率分布の可視化を行った。実験上、および対流熱伝達率の算出上の誤差要因について検討し、それらが可視化結果に及ぼす影響について確認した。 4)上記の実験と同時に、壁面近傍の風速分布測定を実施し、上空風の風向・風速別に、壁面近傍風速と対流熱伝達率分布の関係を明らかにした。
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