研究概要 |
本研究は,音環境評価の基本となる音の質的要素の時間変化とヒトの脳磁界反応の関係を調べ,動的音環境評価メカニズムを明らかにすることを目的とする.本年度は,音の大きさの変化に対する脳磁界反応と脳磁界計測を用いた最適サイン音の検討を行った. 従来の音の大きさの変化に対する脳磁界活動に関する研究は,無音から音が発生する時の脳活動を調べたものがほとんどである.しかし実際の環境では,ヒトは時々刻々変化する音を聞いている.そこで,より実際の環境に近い状態での音の大きさの脳内処理過程を調べるため,ある大きさの音が存在しその後音の大きさが変化する時の脳磁界活動を調べた.音の大きさの変化後約100msに,N1mと同様の反応(N1m')が見られた,音の大きさの減少時には,減少量の変化に関わらずN1'm潜時・振幅はほぼ一定であった.音の大きさの増加時には,増加量の増大に伴いN1'm振幅は増加した.従来のN1mの結果と比較すると,音の大きさの増加に対するN1'm振幅の増加率は,N1m振幅のそれより大きいことがわかった。この結果は,ある程度の大きさの音に順応しているときのほうが,脳は音の大きさの変化に敏感であることを示している. 駅の改札口や階段の場所を音で案内する「サイン音」は,視覚障害者にとって危険物からの逃避や目的場所への移動のために重要である.しかし,実際には視覚障害者の4割強がサイン音を利用しにくいと報告している.本研究では,脳活動からわかりやすいサイン音の推定を目指し,8種類のサイン音(鳥の鳴き声)聴取時の脳磁界活動を解析した.カッコーの鳴き声を聞いている時にN1m活動強度が最大となったことから,カッコーが利用しやすいサイン音の有力候補である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音の基本的要素である,音の大きさについて,その変化に対する脳活動の詳細について,今年度は予定度通り明らかにすることができた.また,サイン音に関しても理想的な実験室条件において,最適サイン音候補を見つけることができた.
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