平成24年度は,スピネル構造の点電荷モデルにおいてクラスター展開を実施した.また,点電荷モデルでの計算を通して,計算手法,精度評価方法の検討を行った.その結果,これまでに広く使われていた精度の指標は,エネルギー計算を行った構造と同程度の周期を持つ構造に対しては有効であるものの,より長周期の構造に対しては有効でないことが分かった.次に,材料を対象とした規則不規則現象の計算を行い,計算手法,精度評価方法の検討を行った.具体的には,MgAl2O4スピネル酸化物における規則不規則現象を対象とした.まず第一原理計算により数百の規則構造に対してエネルギー計算を行った.得られたエネルギーから,クラスター相互作用エネルギーを評価した.多体の相互作用エネルギーは遺伝的アルゴリズムにより最適化した.得られた相互作用エネルギーを用いて,モンテカルロ法により規則不規則現象を計算した.その際,エネルギーを表現する方法としては,一般的なクラスター展開法と,クラスター展開法と遮蔽された点電荷モデルを組み合わせた方法の二種類を用いた.その結果,一般的クラスター展開法では,長周期の構造の精度を評価し,多くのクラスターを考慮すれば,十分な予測精度が得られることが分かった.また,クラスター展開法と遮蔽された点電荷モデルを組み合わせた方法においても,長周期の構造の精度を評価することが重要であることが分かった.点電荷モデルを組み合わせることにより,少ない数のクラスターを用いて,多くのクラスターを用いた一般的なクラスター展開法と同程度の精度が得られた.
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