研究課題/領域番号 |
23686091
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒崎 健 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90304021)
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キーワード | 熱電変換 |
研究概要 |
本年度は、Bi_2Te_3系材料の作製と熱電特性の評価並びに熱電材料と貴金属ナノ粒子が複合したバルクナノ材料の作製と熱電特性の評価の二つの研究を実施した。 Bi_2Te_3系材料を、各元素単体のチャンクを出発物質として真空封入した石英管中で溶融させて作製した。得られた溶融試料をボールミルにより粉砕して、粒径が10μm程度のマイクロ粒子を作製した。その後、放電プラズマ焼結(以下、SPS)法により高密度バルク体に成型した。得られた試料の相状態や結晶構造を、X線回折(以下XRD)測定、走査型電子顕微鏡(以下SEM)観察、エネルギー分散型X線(以下EDX)分析により評価した。作製したバルク体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率、ホール係数を測定し、性能指数ZTを評価した。その結果。本研究により作製したBi_2Te_3系材料の熱電特性は、過去に報告されている同種の材料の熱電特性とほぼ同程度であることを確認した。また、Bi_2Te_3系材料以外にもスクッテルダイト化合物やCu-Ga-Te系化合物を作製し、その熱電特性を評価することに成功した。これらの物質については、将来的に金ナノ粒子と複合化することを考えている。 次いで、このようにして作製した熱電材料のマイクロ粒子上に、放射線照射法で金ナノ粒子を担持させた複合粒子を作製した。得られた複合粒子に対してSPSを施すことでバルク体に成型した。得られた試料の相状態、結晶構造及びナノ粒子の存在形態を、XRD測定、SEM観察、EDX分析、透過型電子顕微鏡観察により評価した。SPSにより得られたバルク体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率、ホール効果を測定し、性能指数ZTを評価した。その結果、金ナノ粒子を担持させたBi_2Te_3系材料の格子熱伝導率は、金ナノ粒子を担持させないものと比べて若干減少した。一方、出力因子の値も減少したことから、性能指数の値は、金の担持前後でほぼ同程度の値となった。今後は、金ナノ粒子のサイズや担持量と熱電特性の相関についてより詳細に研究をすすめていく予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、金ナノ粒子を担持させた場合とさせない場合とで、Bi_2Te_3系材料の熱電特性にどのような違いがあらわれるかを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
貴金属水溶液濃度やガンマ線照射時間等を変化させることで、ナノ粒子の担持量やサイズを変化させた種々の複合粒子を作製する。また、貴金属の種類として、金に加えて、銀と白金も対象とする。ナノ粒子の種類、量、サイズの異なる複合粒子に対してSPSを施すことで、ナノ粒子の分散形態の異なる種々のバルクナノ材料を作製する。バルクナノ材料の各種熱電特性を測定し、ZTを評価する。また、ナノ粒子の種類、量、サイズと熱電特性の相関を明確にし、熱電性能が最も向上しうる最適条件を提案する。また、本研究で対象としたBi_2Te_3系材料は低温域(室温付近)で実用化される熱電材料であるが、高温側では最大250℃程度の温度環境下での使用が想定されている。このことから、今回作製したバルクナノ材料について、室温から最大250℃の温度域で長期間保持した後の組織変化をXRD、SEM/EDX、TEMにより分析することで、長期間高温環境下に置かれた際のナノ組織の安定性を評価する。
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