研究課題
リチウムイオンキャパシタ(lithium ion capacitors: LICs)は電気二重層キャパシタ(electric double layeredcapacitors: EDLCs)の原理を使いながら、負極材料としてLiイオン吸蔵させたグラファイトを使い、エネルギー密度を向上させたキャパシタである。正極と負極とで充放電の原理が異なり、Liイオン二次電池の負極とEDLCsの正極を組み合わせた構造を持っている。特徴は、1.セル電圧と負極の静電容量が増加するため、従来のEDLCsと比較してエネルギー密度で優れること、2.従来のキャパシタの電圧は2.5Vから3Vだが、Liイオンをあらかじめ負極にドープすることによって4Vまで上昇する、3.セル内のエネルギーは電圧の2乗に比例するため、この電圧上昇分により、エネルギーが大きく向上、4.Liをプレドープされた負極は、EDLCsでの活性炭と比べて数十倍程度の静電容量を保有する、など挙げられる。しかし、現状のLICsは正極として活性炭を使用しているため、高電流放電時では出力特性が悪く、Liイオン二次電池と変わらない。そこで、電力貯蓄、電気自動車に適応できる大容量・高出力・長寿命化の電池開発を目指し、本研究では、化学修飾表面を持つ高結晶性単層カーボンナノチューブ薄膜を正極に用いた高容量・高出力・高動作電圧・長寿命の高性能リチウムイオンキャパシタの開発を目的とする。平成23年度は、高結晶性SWCNTのアミン化とそのキャラクタリーゼーションを行った。高結晶性SWCNTsはアーク放電法により合成・精製し、真空中1200℃で3時間熱処理して高結晶化した。アミン基は高結晶性SWCNTsをフッ素化した後、エチレンジアミンを窒素雰囲気下で70℃の還流で行った。アミン化SWCNTsは吸引ろ過により薄膜化し、膜厚はSWCNTの質量で調整した。得られた試料は、表面形状評価、チューブ表面構造評価、薄膜強度、電気導電率、比表面積、かさ密度、化学修飾度を測定し、材料評価した。化学修飾度は、不活性ガス中におけるサンプルの熱処理により、減少した分をSWCNTsの炭素のみの質量百分率で規格化し、同時に熱分解される官能基を質量分析し、官能基の定性測定を行った。
3: やや遅れている
東日本大震災による既存の装置・実験設備が壊れ、研究できる環境を整えるのに時間がかかったため。
単セルLICsにおける充放電特性、高温電圧負荷試験、および正極の表面状態のキャラクタリーゼーションLICsの単セルは、銅薄膜にLiをあらかじめドープしたグラファイトを接着させた負極(縦60mm×横25mm)と、銅薄膜に高結晶性化学修飾SWCNT薄膜を接着させた正極(縦60mm×横25mm)、セパレータ、有機系電解質(LiPF6/PC)、Alラミネートフィルムで構成されている(作製はグローブボックスで行う)。充放電特性は定電流放電法とCV法の両方で測定する。容量は放電時間より算出し、内部抵抗はIRドロップで算出する。高温電圧負荷試験は、セルを恒温槽60℃に保ち、電圧を1.6~4.4Vまで印加して評価する。試験後の正極の表面は、グローブボックス内でLICセルを解体し、正極を取り出し、溶媒でよく洗浄する。表面形状評価(走査型電子顕微鏡)、チューブ表面構造評価(透過型電子顕微鏡-X線蛍光分析、ラマン散乱分光)、Liイオンの局所構造状態評価(X線光電子分光、in-situ XRD、Li-NMR)により、正極表面の評価を行う。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)
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セラミックスデータブック2011
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