研究課題/領域番号 |
23686092
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 義倫 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (30374995)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / 単層カーボンナノチューブ / 蓄電池 / リチウムイオンキャパシタ / 電気二重層 |
研究概要 |
Liをプレドープしたグラファイトを銅薄に接着させた負極、高結晶性カルボキシル基修飾単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube: SWCNT)薄膜を銅薄に接着させた正極、セパレータ、有機系電解質(LiPF6/PC)、Alラミネートフィルムで構成したリチウムイオンキャパシタを作製した。充放電特性は定電流放電法で測定し、静電容量は放電時間から算出、内部抵抗はIRドロップから算出した。高温電圧負荷試験はセルを恒温槽60℃に保ち、放電電圧をそれぞれ2.0、1.8、1.6 Vの過放電電圧まで印加し、試験時間500時間にて評価した。試験後、グローブボックス内でセルを解体して正極を取り出し、溶媒でよく洗浄した後に、表面形状評価、チューブ表面構造評価、Liイオンの局所構造状態評価により、正極表面の評価を行った。それぞれの放電電圧1.6、1.8、2.0 VにおけるSWCNT電極の静電容量はいずれも0.3 Fであり、時間に対する静電容量変化、抵抗変化は見られなかった。一方、参照資料である活性炭電極は2.0 → 1.6 Vに変化させると、徐々に静電容量が発現しなくなり、抵抗値も増加していた。試験後の電極の構造を評価した結果、活性炭電極には200 nm~数μmの球状物質が析出しており、この物質がLiFであることがわかった。一方、SWCNT電極にはLiFはほとんど観察されなかった。この結果から、活性炭電極では過剰な放電電圧(1.6 V)において、電解質が分解・変質し、LiFが生成されるが、SWCNT電極では過酷な放電電圧でも電解質が分解されないことがわかった。LiFは絶縁体であるため、電子は流れない。よって、LiFの生成により、電極内の抵抗は過剰に上昇すると考えられる。現段階では、電解質の分解・変質は活性炭の内部抵抗の負荷による局所的な熱が原因と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災による既存の装置・実験設備が壊れ、研究できる環境を整えるのに時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
①カルボキシル基修飾された高結晶性SWCNTのリチウムイオンキャパシタにおけるin-situラマン散乱分光法によるSWCNTへの電解質イオンの吸脱着メカニズム in-situラマン散乱分光測定のためのリチウムイオンキャパシタの単セルに電圧を1.6~4.4Vまで印加しながら、各電圧でのSWCNTへの電解質イオンの吸脱着の測定を行い、正極で起こっているイオンの駆動メカニズムを明らかにする。また、SWCNTは1本で存在しておらず、数本が束になった状態で存在する。電解質イオンがSWCNT束に吸着している時に、束の内部まで浸入して吸着しているのか、束の表面に吸着しているのか、不明である。そこで、in-situ X線回折法を用いて、SWCNT束への電解質イオンの吸着状態を評価する。 ②アミン基修飾された高結晶SWCNTの合成、およびそのリチウムイオンキャパシタにおける充放電特性、高温電圧負荷試験、正極の表面状態のキャラクタリーゼーション、in-situラマン散乱分光法によるSWCNTへの電解質イオンの吸脱着メカニズムの解明 フッ素化SWCNTからアミノ化処理を行う際に、反応系内に残存する少量の酸素により、アミド化SWCNTが合成されていた。本年度は残存酸素を除去し、アミノ化SWCNTの合成を成功させる。合成後、アミノ化SWCNTを正極としたリチウムイオンキャパシタにおける充放電特性、高温電圧負荷試験、正極の表面状態のキャラクタリーゼーション、およびin-situラマン散乱分光法によるアミノ化SWCNTへの電解質イオンの吸脱着メカニズムの解明を行う。
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