研究概要 |
薄膜結晶成長技術によって強誘電体及び電気磁気(ME)効果物質からなる人工超格子構造を作製し、ME効果の増幅及び変調をすることを目的とし、以下の研究を実施した。 1)低圧多元RFマグネトロンスパッタリング装置を用いたエピタキシャル積層薄膜の作製 連続成膜かつin-situでのRHEED(反射型高速電子線回折)による結晶構造・方位観察可能なRFマグネトロンスパッタリング装置を設計し、各薄膜(Cr_2O_3,Cr_2O_<3-x>.,LiNbO_3)の成膜条件探査を行った。Cr_2O_3においては、LiNbO_3/Cr_2O_3界面に非対称磁性誘起層として酸化欠損Cr_2O_<3-x>を作製することを考慮して、Cr金属ターゲットを用いての作製も行った。スパッタリングのワット数の増加に伴い、結晶性が向上することが明らかになった。また、スパッタリングガスのAr:O比に対して8:1からCr_2O_3が主相として成長し始め、4:1において単相かつ結晶性が最も優れることが分かった。8:1以下の酸素分圧では、Cr_2O_3が酸素欠損した安定してCr_3O_4が形成されることがわかった。一方LiNbO_3においては、スパッタリングのワット数に組成が大きく影響を受けることがわかった。低いワット数においては、Li過剰の薄膜(Nb欠損)が形成されることがわかった。これは、Nb原子が比較的重くスパッタリングされにくいためだと考えられる。しかしながら、高いワット数においてはLi欠損することがわかった。また、ガス比に関しては、Ar:O比に対して4:1が、もっとも結晶性が良いことがわかった。いずれの試料においてもc-Al_2O_3基板を用いることにより、エピタキシャル成長することをRHEEDにより確認した。また、電気特性に関してもいずれの試料においても約1.0x10^<-5>A/cm^2のリーク電流密度であることがわかり、ME効果に必要な電界を印加できる膜であることがわかった。 以上の結果により、当初の予定通り人口超格子を作製するのに必要な成膜条件を明らかに出来たと言える。
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