研究課題
液体への電圧印加によって生成する微小液滴を原料として用いる化学気相析出法(静電噴霧CVD)について、代表的な酸化物セラミックスの一つである酸化アルミニウムを対象として検討を行った。前年度までの研究では、印加電圧や吐出速度(流量)等による液滴径の変化、基材への電圧印加による耐電液滴の高効率捕集など、主に原料供給系に関する基礎的な実験を進め、本年度研究では、有機金属を用いた酸化アルミニウムの成膜実験を行った。基板加熱の方法に関して、基板を加熱ステージの上に載置して成膜するcold-wall方式の場合、基板表面に到達した液滴からの有機溶媒の蒸発によって成膜中の基板表面温度が大きく低下し、所定温度に保ったまま成膜することは困難であり、膜の厚さ方向で膜の微細構造・結晶相が変化した。そこで、成膜中の試料表面にNd:YAGレーザーを照射し、試料表面への局部的エネルギー供給を試みたところ、有機溶媒の揮発による温度低下は抑制され、膜の均一性は向上した。さらに、成膜条件によっては、粗な層と密な層が交互に積層した構造を持つ膜が得られる場合があった。成膜中の成膜室内圧力を測定したところ、10~20 s周期で圧力が変化し、このような成膜室内圧力の周期的変化が積層構造を形成していると推測された。このような変化を制御するため、電磁弁を用いた圧力の精密制御を行ったところ、膜の均一性を向上させることができた。加熱方式の最適化、圧力制御装置の導入によって、均一なα-酸化アルミニウムを得ることができた。成膜圧力0.8 atmでも緻密膜が得られ、この圧力は通常のCVDの成膜圧力よりも3桁程度高いが、大気圧CVDと比較しても高品質の膜であり、ナノ液滴を原料として用いることの利点を示すことができた。今後、高圧力のCVDプロセスとして、蒸気圧の高い成分を含むセラミックスの合成プロセスとして展開を図る。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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