研究課題/領域番号 |
23686097
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大森 俊洋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451530)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マルテンサイト変態 / 超弾性 / 形状記憶合金 / 鉄合金 / 結晶粒径 |
研究概要 |
Fe-Mn-Al-Ni合金において、VSMやSQUID磁力計を用いてマルテンサイト変態挙動と磁気特性について調査を行った。母相は強磁性、マルテンサイト相は反強磁性と考えられる。外部磁場の大きさを変化させてマルテンサイト変態温度の測定を行ったところ、7Tの磁場によりMs温度が約75K低下した。このことは、両相の磁化の大きさの差により、ゼーマンエネルギーの寄与に起因して、マルテンサイト変態温度が磁場により低下したと説明できる。また、変態エントロピー変化が小さいことも寄与している。 ミクロ組織と超弾性効果の関連性について調査を行った。<110>繊維集合組織が形成された線材において、結晶粒径を変化させて超弾性特性の評価を行ったところ、結晶粒径が線径より大きいバンブー構造になったとき、得られる超弾性歪が著しく大きくなることがわかった。Fe-Mn-Al-Ni合金は変態歪の異方性が強いことが結晶学的関係から判明し、結晶粒間の拘束と超弾性特性の観点から考察を行った。SachsモデルとTaylorモデルに基づいてマルテンサイト変態誘起応力を見積もったところ、バンブー構造ではSachsモデルに、3次元拘束が強い場合はTaylorモデルに近かった。その中間では、線材の断面において表面に接さない結晶粒の面積割合で定義する3次元拘束粒パラメータとマルテンサイト変態誘起応力の関係が、おおよそ直線関係にあった。一方、超弾性歪量はバンブー構造に近づくにつれて著しい増加を見せた。以上より、本合金系は結晶粒間の拘束が強く、結晶粒を粗大化させることで優れた超弾性が得られることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、ミクロ組織と超弾性の関係性を明らかにすることができ、優れた超弾性を得るために不可欠な組織因子を特定できた。また、外部磁場によりマルテンサイト変態温度を大きく変化させることができ、磁場駆動アクチュエータとしての可能性も見いだせ、新しい展開につながる成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
超弾性を得るための組織制御が明らかになったため、組成を変化させたときの組織制御についても検討する。また、最適組成決定する必要がある。
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