研究概要 |
本年度は,Fe-3Ni-1.5Mh-0.15C合金を用いて,973Kおよび773Kにおける一軸圧縮加工後の焼き入れおよび673K保持におけるマルテンサイト/ベイナイト変態挙動を調べた.また,レーザー顕微鏡を用いたベイナイト組織の観察手法を構築した. オースフォームを施さずに室温への焼入れで生成したマルテンサイト及び673Kで3.6ksの恒温保持により生成したベイナイトでは,伸長方向の異なるブロックが入り乱れて生成しており,微細なパケットが観察される.973Kでオースフォームを施すと,マルテンサイト,ベイナイトともに,伸長方向の揃ったブロックが集団で生成し,粗大なパケットが形成されるようになるが,ベイナイトではその傾向は弱い.加工度の増加に伴って,マルテンサイト,ベイナイトともに,ブロックが微細化し,特にマルテンサイトで微細化の効果が大きい.773Kでオースフォームを施すと,973Kのオースフォームと同様に,加工度の増加に伴いブロックが微細化するが,微細化の度合いは,973Kのオースフォームと比べて小さい. マルテンサイト及びベイナイトの変態集合組織は,加工度と加工温度により変化する.973Kでのオースフォームでは,マルテンサイトは<001>αと<111>αが圧縮軸に平行な集積を示し,加工度が30%から50%に増加すると,<001>αへの集積が弱くなる.ベイナイトも同様であるが,その集積程度はマルテンサイトよりも低くなった. 筆者らが開発したオーステナイト方位逆計算法を用いて,生成する24バリアントの割合を定量化したところ,一軸圧縮変形に対するオーステナイトの主すべり系および二次すべり系のすべり面に沿ったバリアントが優先的に生成し易いことが明らかとなった.更に,室温でオーステナイトが安定な合金を用いて,加工組織を観察したところ,主すべり面および二次すべり面に沿ったマイクロバンド組織が発達していることが確認された.このことから,加工によりオーステナイト中に導入されたマイクロバンドに沿ったバリアントが優先的に核生成し,かつマイクロバンドを横切るバリアントが成長しにくいため,マイクロバンドに沿ったバリアントが優先的に生成したものと考えられる. また、レーザー顕微鏡を用いた組織観察については,変態の遅いFe-9Ni-C合金を用いて,オーステナイト化後の等温保持におけるベイナイト変態速度およびその後の同一視野をEBSD測定し,オーステナイト結晶方位に関する情報も合わせて取得できることを確かめた.
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