本研究では、高保磁力FePtナノ粒子の磁化反転を熱やマイクロ波のアシストにより行うエネルギーアシスト磁気記録方式で4 Tbit/in2の記録密度に対応できるFePt系垂直磁気記録媒体の開発を目指す。そのために、4 Tbit/in2級のエネルギーアシスト磁気記録に適したFePt系垂直磁気記録媒体を開発し、熱及びマイクロ波を照射することによる磁化反転の静的測定とダイナミクスの測定を行う。 ①マイクロ波照射磁化反転: 107 erg/ccの異方性を持つFePt-Cグラニュラー薄膜で高周波磁場の印加を行った。印加できるDCの外部磁場が最大でも15 kOeなので、保磁力が約6 kOeのグラニュラー薄膜である。15 GHz以下の高周波磁場印加により約1.5 kOeの保磁力の減少が見られた。しかし、20 GHz以上では保磁力の減少は観測されなかった。測定に使用した素子のウエーブガイドは、絶縁層を挟んで最も基板側に位置するホール素子の電流リークを避けるために、片側のグランド線を断線させている。このウエーブガイドの透過特性を評価したところ、20 GHz以上で高周波が減衰していることがわかった。今回、低周波側でしか高周波磁場アシスト効果が得られなかったのはウエーブガイドの伝送特性に起因していると考えられる。 ②FePt媒体の微細構造制御:相分離傾向および混合エントロピーを考慮して非磁性マトリックス材料としてCr2O3を選択した。約4nmの平均粒子径・柱状構造を両立する微細構造の作製に成功した。しかし、規則度が低く保磁力が低いという問題点があった。FePt-Cr2O3の膜厚を12nmに増加し、さらに下地層として0.4nmのFePtAgを成膜することにより、平均粒子径約6nm・アスペクト比1.5以上の柱状構造をもつ保磁力約20 kOeのグラニュラー薄膜の作製に成功した。
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