研究概要 |
本研究では,フェムト秒パルスレーザー光の高いピーク強度に加え,位相と偏光の空間分布を高度に制御して超高温・超高圧・超高速な三次元構造を持つ極限光反応場を形成し,それを新規物質創製プロセスの場として用いる.レーザー光を照射する対象物質には,高強度レーザー科学の領域ではほとんど対象とされて来なかった密度の高い液体を用いる.すなわち本研究では,三次元構造をもつ極限光反応場と液体との組み合わせによって,究極の環境下でしか生成されないような原子レベルで高度に構造・形態制御された物質の創製を目的とし研究を行った.すなわちビームの横断面偏光分布を制御したレーザー光を強く集光することによって三次元構造を持つ光の場を形成し,それをこれまでにない物質合成の新規反応場として用いることを計画しているが,本年度はまず,異なる偏光(直線偏光と円偏光)を有するフェムト秒パルスを液体中に強く集光した際の電場について,非線形光学効果によって焦点の後方に発生する白色光の偏光を測定することによって評価した.また異なる横断面偏光分布を持つレーザー光が粒子作製におよぼす影響についても検討を行った.その結果,発生した白色光は入射光の偏光を維持していることが分かった.一方,直線偏光ならびに円偏光のレーザー光を金属イオンを含む水溶液に強く集光した場合,直線偏光を用いた場合に粒子の生成効率が高くなることが分かった.レーザー光の偏光が物質におよぼす影響についてはこれまで気体などの希薄系に限って研究がおこなわれてきたが,本研究で得られた結果は「凝縮系における偏光の効果」を初めて明らかにしたものである.
|