研究概要 |
電子部品の小型化、効率化、多様化が求められる中で、主要構成材料である銅合金も高性能化、多様化の要求が強い。高強度銅合金の1つである時効析出型チタン銅(Cu-Ti合金)は優れた強度特性や応力緩和性、疲労特性を有し、最近では水素中時効により、強度特性を堅持したまま、導電率を著しく改善されることが報告された。ただし、上記の特性バランスを付与するためには長時間(7-10日)の処理が必要であり、現実的ではない。 本年度は、本合金の強度-導電性バランスを効率的に向上させるために、(1)加工プロセスの検討、(2)合金添加への影響を検討した。 (1)Cu-4mol%Ti合金を溶体化し、次の多段時効を行った。つまり、真空中にて600度で1~600sの時効し、次に、水素中にて420-450oCで時効した。その結果、従来材と同等以上の強度を示し、かつ導電率を25%IACS以上(従来材では12%IACS程度)とした合金を作成できた。処理に要した時間は3-7日であり時効時間の短縮化にも成功したが、まだ実用的なレベルではない。 (2)微量N,Bを添加したCu-Ti合金の時効硬化挙動を調査した。強度低下をもたらす不連続析出物の形成が,NおよびB添加に起因して抑制される。このため、最高強度を示す時効時間範囲が拡大する。本成果より、微量N,Bを添加したCu-Ti合金を水素中時効すれば、さらに強度-導電率バランスの優れた合金が実現される可能性が高い。
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