研究概要 |
本年度は、ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミック酸薄膜を作製し、金属イオンをドープした試料をメタライズ用フィルムとして用い、金属イオンの還元プロセスにおける薄膜形成過程に関する詳細な検討を行った。その結果、異なる還元剤を用いることによってイオンの還元速度を制御することが可能であり、表面に析出する金属薄膜と下層のポリイミドフィルムとの間の界面構造を制御することに成功した。また、薄膜形成過程においては、還元剤の浸透と、金属イオンの表面への拡散が競合することにより、金属ナノ粒子からなる界面構造が構築されることが明らかとなり、膜内物質移動のプロセスを含む膜成長機構を明らかにした。この金属薄膜形成手法をもとに、ネガ型のレジストを用いたフォトリソグラフィーによって、位置選択的に金属薄膜の形成が可能であり、金属回路の形成に本手法が適用可能であることがわかった。さらに、テープ剥離試験の結果、得られた金属パターンは良好な密着性を有していることが確認された。 本年度はさらに、金属イオンをドープしたポリアミック酸薄膜に電極を接続し、固相電気化学反応を誘起することにより、位置選択的に金属薄膜の形成が可能であることを新たに見いだした。この手法では樹脂内部で金属薄膜を成長させることができ,連結したナノ構造体を樹脂と金属の界面に形成させることにより、高い密着性と導電性を有するダマシン型の金属薄膜パターンを形成することが可能であった。上記のプロセスにおいて、析出プロセスの精密な制御と界面構造の最適化が進めば,信頼性の高い回路パターンを有する樹脂の作製が可能となり,将来的にフレキシブルプリント配線板への用途展開が期待できる。
|