研究課題/領域番号 |
23686107
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
赤松 謙祐 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60322202)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ダイレクトメタリゼーション / 銅めっき / ダマシン / 表面改質 |
研究概要 |
本年度は、ダイレクトメタリゼーション方により析出した金属薄膜と樹脂との密着機構を解析するため、水素還元により樹脂内部および表層に、無電解銅めっきの触媒となるニッケルナノ粒子を析出させ、その分散状態を制御することにより密着力を改善することを試みた。その結果、水素分圧および還元時間を変化させることにより、ナノ粒子サイズおよび充填率を制御可能であることが明らかとなり、ニッケルナノ粒子を触媒とするマトリックスの分解反応により、ニッケルナノ粒子間距離を制御可能であることが明らかとなった。以上の結果より、金属と樹脂間の密着機構を解析する上で重要なモデル基板の作製に成功した。 また、ソフトリソグラフィーにより凹凸構造を作製したポリイミド樹脂を作製し、樹脂上へのダマシン構造の作製を行った。ドット、ホール、ラインの3つのパターンにおいて、様々なサイズを有する石英ガラス鋳型上にポリアミック酸溶液を塗布、乾燥した後、石英ガラス鋳型から、ポリアミド酸部分を剥離することにより、表面に規則的な微細構造が形成されたポリアミド酸モールドを作製した。作製したポリアミド酸モールドにニッケル(II)イオンを吸着させた後、水素化ホウ素ナトリウム水溶液に浸漬させることにより微細構造表面にニッケル薄膜を形成した。次に、ニッケル薄膜をシード層として、無電解ニッケルめっきを行うことにより、凹部にニッケルを充填すると共に、ニッケル基板層を形成した。その後、無電解銅めっきにより増膜することで、表面に規則的な微細構造を持つ銅薄膜を形成することに成功した。さらに、化学エッチング処理により過剰に増膜した部分を除去し、銅配線部分が埋め込まれたダマシン構造を作製することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ダイレクトメタリゼーション法による樹脂上への微細配線形成において、その反応機構の解明、密着力の改善およびダマシン構造作製への展開を目的としている。過去2年の研究課題遂行において、薄膜形成過程を微視的に観察することにより、膜成長機構を明らかにすることができた。また、本年度に行ったモデル基板からの銅薄膜成長により、密着性と界面構造の相関も解明されつつある。さらに電気化学的手法を取り入れることにより埋め込み型配線構造の新規作製手法も提案することができた。このように、当初の計画に沿って研究を推進することができたことから、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、当初の計画通り、埋め込み型ダマシン構造への本手法の適応を中心に研究を進める。具体的には、サブミクロンスケールの凹凸構造を有するシリコンモールド上にポリイミド前駆体樹脂をコートし、ナノ構造を転写した基板上に、ニッケルイオンを吸着させ、還元処理条件を変化させることによって微細構造を制御した金属ナノ構造薄膜を形成する。さらに得られた基板上に銅めっきを施すことにより、高い密着強度を有する埋め込み型ダマシン配線を形成する。配線幅および膜構造を最適化することにより、信号伝達に優れたフレキシブル微細回路パターンの形成手法を確立する。ダマシン構造作製のためのモールド作製も順調に進展しており、これまでに得られた電気化学的手法に関する成果についても論文投稿への準備が整いつつある。このように、当初の計画に加えて、回路パターンのオンデマンド形成を視野に入れた研究を推進できると期待できる。
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