研究概要 |
本研究は,炭素資源の熱化学転換反応において発生する初期熱分解生成物の気相熱分解,部分酸化,水蒸気改質反応特性を高精度に予測できる素反応速度モデルの構築を目的とする.そこで,初期熱分解生成物,とりわけタールと総称される超多成分混合系の分子組成を解明するための実験技術並びに新規分析手法の開発に取り組む.さらに,初期熱分解生成物に含まれる化学種の気相反応を網羅する素反応速度モデルを量子化学計算等を駆使して構築し,その妥当性を実測値との比較により検証する.そして,これらのデータベース化・公開を通じて,高効率炭素資源転換プロセス構築のための熱化学反応情報基盤確立に繋げることを目的とする.研究初年度であるH23年度の研究実績は以下のようにまとめることができる. ・熱分解装置とGCやGC/MSを直結した石炭,バイオマス粒子の迅速熱分解生成物分析装置を開発し,セルロースや数種類の石炭,草木系バイオマスマス試料の初期熱分解生成物組成を実験的に定義した.さらに,初期揮発成分の気相滞留時間を制御することにより,バイオマス初期熱分解性生物め気相クラッキンゲ反応に関する速度論的データを得た. ・セルロース迅速熱分解生成物を詳細に分析し,一酸化炭素やメタン,エチレンなどの主要生成物以外にアセチレン,プロピン,プロパジエン,シクロペンタジエン等のアルキン,ジエン化合物が生成することを初めて明らかにするととともに,"芳香族構造を含まないセルロース"から芳香族化合物が生成する反応経路におけるこれらアルキン、ジエン化合物の重要性を詳細化学反応モデルおよび実験事実の双方から検討し,,両者が矛盾しないことを確かめた. ・タールと総称される超多成分混合系の分子組成の解明にむけた新規分析手法としてイオン付着イオン化質量分析装置を質量分析装置開発の学内専門家の協力の下,設計して自作した.いくつかのモデルガスを用いた実験を行い,本イオン化法の最大の特長であるフラグメントフリーを確かめた.
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