マイクロ流体デバイス(MFD)を用いた連続水熱法において、粒径分布が狭く平均粒径を制御した酸化物ナノ粒子(NPs)の製造には、不均質核発生/成長による粒径分布の拡大や多峰化等の回避が不可欠である。本研究は、この課題を解決可能なMFDを開発して有用性を実証し、核発生/成長機構を解析して所望の特性を有するNPsの設計指針を得ることが目的である。均質かつ微細なNPs合成には数百ミリ秒以下の滞在時間での混合(昇温)の完結と高過飽和比の付与(瞬時に原料金属塩の全てを核発生させる条件設定)が不可欠である。達成には、過飽和比制御用のアルカリ水溶液との混合方法が重要であり、旋回流の積極的な利用も有効である。そこで、旋回流の導入による3液の急速混合(昇温)や不均質核生成/成長の抑制のためにMFDの構造を最適化した。実際に反応速度が遅く粒径制御が難しいZn(NO3)2からのZnO合成系に、開発したMFDを適用した結果、従来型と比較して顕著な性能向上が認められた。 本年度は、旋回流を利用した3液混合のためのMFDにおいて、最も重要となる混合直前までの原料温度の精密制御(主に常温制御)構造を強化した改良型MFDを開発し、核発生過程のより高度な制御を可能とした。また、核生成後の成長過程の制御を目的とし、MFDを連結させることで原料の2段階供給が可能なシステムを構築し、実際に1段目で核発生過程を、2段目で成長過程を制御する手法について検討を行ない、粒径を制御したNPsの設計指針を整理した。以上は水溶性原料が使用できる系での検討であるが、Tiなどを含む酸化物の合成には、TiO2-NPsなどの不溶性原料を含む系での核生成成長過程の把握と制御が不可欠となる。そこで、Ca(NO3)2とTiO2-NPsを原料としたCaTiO3-NPs合成を対象に、滞在時間やアルカリ濃度を操作因子として生成機構を解析し、不溶性原料を含む系での核発生や成長過程の制御因子を整理した。
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