研究課題
太陽光エネルギー変換のための半導体電極や光触媒の設計指針を確立することを目的とし、電気化学インピーダンス法などの周波数分解計測法を用いて半導体微粒子膜の特性評価を行った。太陽光エネルギー変換方法のひとつに半導体微粒子膜電極を用いた水分解による水素製造が挙げられる。半導体電極のうち、半導体微粒子自体の改良や粒界抵抗の低減などによる光電極性能向上の取り組みは報告されている。しかし、集電体としての役割を担う導電性基板についての知見はあまりない。本研究では可視光域を利用できる酸化タングステン(WO3)を用いて光電極特性に対する基板抵抗などの影響を調べた。金属基板としてチタン、導電性酸化物基板としてフッ素ドープ酸化スズ(FTO)及びスズドープ酸化インジウム(ITO)を用い、光照射下でWO3電極の交流インピーダンス測定を行った。チタン板を基板としたWO3電極を高温で焼成したときに高い光電流密度をしめした。直流4探針法にて基板の表面抵抗を測定した結果、酸化皮膜形成に起因してチタン板の表面抵抗は著しく増大していた。いずれのWO3電極においても、その光電流の高低を基板表面抵抗の変化だけで説明することはできなかった。そこで、交流インピーダンスの測定を行い、電極の内部抵抗と光電極特性との関わりを検討した。交流インピーダンス法は、交流電位の周波数を変えることで時定数の異なる電子移動過程を分離して評価できる手法である。測定の結果、チタン板を基板として用いたWO3電極では、抵抗成分を分離できた。また、分離評価できた抵抗成分は光照射強度に依存しないことがわかった。さらに、この抵抗成分の抵抗値が小さくなると光電流が向上することが分かった。
2: おおむね順調に進展している
光電気化学反応の電気化学インピーダンス測定の結果、光照射強度に依存しない抵抗成分を分離評価できた。また、この抵抗と光電極性能に相関について重要な知見を得ることができた。
光強度変調分光法(IMPSおよびIMPV)を用いて、電子拡散速度・再結合速度の評価を試みる。電気化学インピーダンス法は光励起電子の移動速度や寿命に関する情報も内包しているが、測定結果から電子拡散速度や再結合速度を抽出することは難しかった。今後は、光強度変調分光法による評価を進めていく。
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