研究課題/領域番号 |
23686114
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
天野 史章 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (10431347)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光触媒 / 酸化チタン / 水素還元処理 / 光電気化学特性 |
研究概要 |
本研究では、太陽光エネルギー変換のための半導体電極や光触媒の設計指針を確立することを目指している。そこで、古くから研究されてきたルチル型TiO2に着目し、研究を行った。 ルチル型TiO2はアナタース型よりも性能が低いとされてきたが、500℃以上の温度で水素還元処理を行うことによって、その光触媒活性が著しく向上することがわかった。水素還元処理されたルチルは、室温・空気中においても安定であり、種々の光触媒反応において高い活性をしめした。この活性向上のメカニズムについてさらに研究した。 水素還元処理の役割としては、酸素欠陥および浅いドナーの生成が考えられる。浅いドナーに由来して伝導帯の電子濃度が増加する。この影響を評価するため、ドナー密度の測定を行った。チタン板表面上にルチル型TiO2 膜を形成し、比較的高温で水素還元処理したところ、伝導帯の電子密度が向上し、導電性が高くなった。導電性が高いと、光吸収によって生成した電子が移動しやすくなる。また、ドナー密度が向上することでバンドベンディングが大きくなり、光励起電子と正孔の再結合が抑制される。これらの結果、光触媒活性が向上することが示唆された。 つぎに、TiO2への異原子価カチオンのドープを試みた。一般に、高原子価カチオンを添加した場合は伝導電子が生成し、低原子価カチオンを添加した場合には酸素欠陥が生成する。ルチル型TiO2粒子に高原子カチオンを添加したところ、水の光酸化分解活性が向上した。逆に、低原子価カチオンを添加した場合には、光触媒活性は低下した。このことから、光触媒活性の向上には、酸素欠陥ではなく、伝導電子が寄与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間電荷層の微分容量を電気化学インピーダンス測定で求め、Mott-Schottky プロット解析することによって、TiO2 膜のドナー密度を評価した。この結果、半導体電極や光触媒としての性能との相関について知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
電気化学インピーダンス法は、電位変調に対する電流応答の変化を観測する手法であり、静電容量の測定からMott-Schottkyプロットを用いてドナー密度とフラットバンド電位を評価できる。これらの物性と光触媒活性及び光電極特性との相関を継続して調べる。また、得られた研究成果を取りまとめ、学術論文として投稿する。
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