研究概要 |
チタン酸ナノチューブの酸触媒特性発現機構の解明のために、チタン酸ナノチューブと類似した結晶構造を有する層状チタン化合物やそれらを剥離したナノシートとの構造特性,酸触媒特性の比較を行った。詳細なRaman, FT-IR分光分析,DFT計算などの結果から、構造の歪みとブレンステッド酸強度の関係性を明らかにすることができた。チタン酸ナノチューブは、ナノシートよりもTi-O-Ti結合の伸縮振動がより低波数シフトし、Ti-O-Ti結合が弱くなっており、アンモニア吸着エネルギーを測定すると、チタン酸ナノチューブの方がより大きな値(113 kJ/mol)を示すことが明らかとなった。つまり、チタン酸ナノチューブのブレンステッド酸点(Ti-OH-Tiサイト)は、構造の歪みにより強くなっていることが明らかとなった。このアンモニア吸着エネルギーは、HYゼオライトの値に匹敵する値であることも明らかとなった。ルイス酸点に関する計算も行ったが、OH基による吸着の影響を除去することができないため、測定することができなかった。これらの結果は、これまで解明されていなかったチタン酸ナノチューブの酸性質を初めて解明した結果であり、学術雑誌(Chem. Mater., 2013, 25, 385-393.)に掲載された。 チタン酸ナノチューブの高性能化を目的として、Nb5+やTa5+をドープしたチタン酸ナノチューブの合成を試みた。いずれの場合も、触媒活性が2倍以上に向上することが明らかとなった。さらに、表面をリン酸や、フッ素で処理したチタン酸ナノチューブの合成も行った。グルコースからHMFを合成する反応に対して選択性が大きく向上するが、チューブ形状が壊れ、安定性の良くないものであることが明らかとなった。これら得られた知見に対して、国内学会にて発表した。
|