研究概要 |
チタン酸ナノチューブの酸触媒活性向上の目的で、水熱合成条件を変化させた試料を合成し、酸触媒特性の比較を行った。水熱合成温度が100℃未満の時、酸化チタンナノ粒子表面にシート状の構造が形成されるが、100℃以上にするとナノチューブ構造へと変化した。さらに、200℃になると層状チタン酸化物が積層したナノロッド構造へと変化した。水熱合成温度の上昇に伴い、イオン交換サイトは大幅に増加し、200℃の試料が最大となるが、触媒表面に露出しているイオン交換サイト、つまりブレンステッド酸点の量は、ナノチューブ構造を形成する150℃の試料が最大となった。合成した試料を用いてFriedel-Craftsアルキル化反応を行うと、150℃の試料が最も高い触媒活性を示し、200℃の試料は全く触媒活性を示さないことが明らかとなった。200℃の試料はイオン交換サイトを数多く有するが、層間に反応基質が入らないため触媒活性を示さなかったと考えられる。これらの結果は、チタン酸ナノチューブの最適な合成条件および表面に存在するブレンステッド酸量を明らかにした結果であり、学術雑誌(J. Mater. Chem. A, 2013, 1, 12768.)に掲載された。 チタン酸ナノチューブの高性能化を目的として、Nb5+やTa5+をドープしたチタン酸ナノチューブの合成を試みた。Ta5+をドープするとルイス酸強度が低下するが、Nb5+をドープするとブレンステッド酸強度が増加し、アルキル化反応が最大で10倍程度まで向上することが明らかとなった。その他のTi-Nb複合酸化物材料や、Nb酸化物を担持したチタン酸ナノチューブではこの反応はほとんど進行しないことから、チタン酸ナノチューブの骨格にNbがドープされることで強ブレンステッド酸点が形成されることが示唆された。これらの結果を国内外の学会で発表し、現在論文投稿準備中である。
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