抗体医薬の併用は特にガン治療に於いて、安全性と治療効果を向上させることができるが、薬価の高さも大きな問題の1つであるため現実的ではない。本提案では、モノクローナル抗体に2つ目の特異性を付加させることで、併用投与と同等以上の効果を発揮する二特異性化抗体の開発を目指すと共に、申請者が開発してきた、二重特異性抗体と統合させることで、さらに付加価値の高い新世代治療抗体を創製することを目的としている。 まずEGFRとErbB3の両者に結合する二特異性抗体に関して、評価系として有効であることが明らかになったELISA法により網羅的な結合活性評価を進めた。抗EGFR抗体のVLへの変異導入数が異なる3つのライブラリから得られたクローンを用いて、本来の標的抗原であるEGFRに対する結合評価を行ったところ、変異導入数が少ないライブラリほど結合を保持しているクローンが多くみられた。続いて、ErbB3に対する結合活性評価を行ったところ、変異導入箇所との相関はみられなかったものの結合を示すクローンがみられ、結果、いずれのライブラリからもEGFRとErbB3の両者に結合活性を示すクローンの単離に成功した。そこで、本プロセスの汎用性を示すため、EGFRとHER2の両者に結合する二特異性抗体の取得を、同様の条件および手法を用いて進めた。HER2を強制発現させたCHO細胞を用いて選択操作を行った後、ELISAにより結合活性を評価することで、両者に結合を示すクローンの取得に成功したが、クローンの濃縮等を示したライブラリは、EGFR/ErbB3二特異性抗体の取得の際とは傾向が異なっていたため、複数のコンセプトに基づくライブラリを準備することの重要性が示された。 一方、ヒト型化抗CD16抗体を用いた二重特異性抗体に関して、がん細胞傷害活性と細胞を用いた架橋能評価の間には相関がみられるという知見が得られた。
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