研究課題/領域番号 |
23686119
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
舟橋 久景 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 助教 (60552429)
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キーワード | 細胞デバイス / 分化誘導 / 遺伝子発現制御 / 単一細胞 |
研究概要 |
「研究の目的」 本研究では、幹細胞から分化した異種系譜の細胞が共存し、それらが協調して機能を発揮する新規細胞デバイス作製のための基盤技術を開発することを目的としている。平成23年度は、多分化能を有するEmbryonicStem(ES)細胞を培養し、インジェクション技術を用いて標的細胞の転写因子発現を制御することにより希望の細胞系譜へと分化誘導する基本技術の確立を目的とした。 「研究の計画」 当初は、強制発現プラスミドやshRNA発現プラスミドの導入による転写因子発現自体を制御する方法を計画していた。しかしプラスミド導入の場合、転写因子発現制御への効果が現れるまでの時間が不明瞭であることから、転写因子活性自体を即時に制御する新しい方法論の開発を行った。 「結果」 インジェクション技術を用いて、標的細胞へ、核移行機能と蛍光機能を保持したままタンパク質をする方法を確立した。そこで、転写因子タンパク質を導入すれば、即時に活性が上昇することが期待できる。今年度は、ES細胞の未分化機能維持に重要な役割を担っていると報告されている転写因子:Oct3/4の大腸菌を用いたタンパク質合成法の確立を行った。その結果、(1)Histidine-Tagとの融合タンパク質として、(2)Rosettagami-2をホストとして用いて誘導発現を行い、(3)不溶画分を回収後、(4)尿素変性下においてアフィニティー精製を行い、(5)透析によりリフォールディングをことにより、比較的純度の高いOct3/4タンパク質を可溶化状態で得ることに成功した。 転写因子の活性を即時に抑制する方法として、Decoy DNA法に着目した。Tet-Off Systemが組み込まれたEBRTcH細胞をモデルケースとして、tTA転写因子の結合サイトを含むDNA断片をDecoyとして標的細胞ヘインジェクション法により導入した。その結果、DecoyDNAを導入した細胞ではtTA転写因子により発現されるマーカータンパク質、Venus蛍光タンパク質の発現が低下した。tTAがDecoy DNAを認識し結合することにより、本来の転写活性が抑制された結果であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、多分化能を有するES細胞を培養し、インジェクション技術を用いて標的細胞の転写因子発現を制御することにより希望の細胞系譜へと分化誘導する基本技術の確立を目的とした。タンパク質を標的ES細胞へ導入することに成功し、転写因子Oct3/4タンパク質を大腸菌を用いて発現し、可溶化状態で入手することに成功した。また標的単一ES細胞へDecoyDNAをインジェクションにより導入することによって、標的転写因子の活性抑制制御に成功したことから、転写因子活性制御のための基本技術の確立が出来たと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、23年度に確立した、標的細胞内の転写因子活性制御法を用いて、実際に分化を誘導する。また、本研究は異種の細胞が協調して機能を発揮する細胞デバイスを作製するための技術開発であることから、本年度から、セルライン化された細胞をモデルとして用い、異種細胞間で機能協調させるための基礎技術開発を開始する。
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