研究概要 |
現行の機械的なアクチュエータと比較すると、生体内の筋肉はきわめて高いエネルギー効率を有している。本研究では、研究代表者が今までに開発してきた「磁力を用いた三次元組織構築技術」を応用して、高密度の筋芽細胞からなる三次元組織を構築し、さらに遺伝子導入および電気刺激培養により機能を高めて、電気刺激に応じて収縮運動する人工筋組織(バイオアクチュエータ)を構築することを目的として研究を行った。平成25年度は最終年度の取りまとめとして、研究実施計画に基づいて、主に、遺伝子導入と電気刺激培養の組み合わせによって、さらなる高機能人工筋組織構築法の開発に関する研究を行った。前年度までに、磁力を用いた三次元組織構築技術で、電気刺激によって収縮する筋組織を作製し、電気刺激のプログラムを筋力トレーニング用に変更して電気刺激培養を行ったところ、0.3V/mm, 1Hz, 4msの電気刺激条件で培養した場合に最も効果が高く、電気刺激培養なしの場合と比較して約5倍強い力を発生する人工筋組織を作製することに成功した。また、骨格筋細胞増殖および分化を促進するIGF-Iあるいは抗アポトーシス効果のあるBcl2の筋芽細胞への遺伝子導入によって、それぞれ人工筋組織の収縮力増強効果(約1.5-2倍)が見いだされた。平成25年度は、IGF-IおよびBcl2遺伝子を共導入した筋芽細胞を用いて三次元筋組織を構築し、さらに電気刺激培養を行ったところ、約8倍もの強い力を発生する人工筋組織を作製することに成功した。これらの結果から、人工筋組織における収縮力の増強には、IGF-IおよびBcl2遺伝子導入および電気刺激培養の組み合わせが非常に有用であることが分かった。
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