研究課題
音波を使用した海洋生物(魚類や動物プランクトンなど)の調査手法を高度化するため,リニアFM信号といった広帯域音波が扱える送受波器(音波を送波・受波するセンサー)を開発し,エコー(生物に当たって跳ね返ってきた音波)から生物学的情報(サイズや分類群など)が抽出できる広帯域音響探査システムを開発中である。平成23年度までに,30~150 kHzで使用可能な広帯域送受波器を完成させ,実験システムを構築した。また,システムの較正方法とターゲットストレングス(生物1個体の音波反射強度,TSと略す)スペクトルの測定方法を確立した。しかし,システムの信号対雑音比が低いことが解決すべき課題として残った。そこで平成24年度は,ハードおよびソフトの両面から以下の対策を施し,信号対雑音比を向上させた。1)送受波器へ印加できる最大電圧を水槽実験で調べ,送波音圧を最大限向上させた。2)送信波形の振幅を変調することにより,送受信系感度の周波数特性を平坦にした。3)回路に雑音対策(シールド線や金属ケースを使用)を施し,雑音に強い受信系とした。実際の調査では,生物1個体を観測対象とするだけでなく,生物群集を相手にすることが多い。そこで,TSスペクトルの測定方法を発展させ,体積後方散乱強度(生物群集の音波反射強度)スペクトルの信号処理アルゴリズムを構築し,シミュレーションと実測の両面から正しいことを確かめた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画以上には研究が進展しなかったが,研究目的の達成に向け順調に課題をクリアしており,平成25年度の研究計画がスムーズに行えると自己評価している。
前年度までの成果を生かし,実用的で可搬性に富んだ広帯域音響探査システムを製作する。別途,前年度までに製作してきた試作機を活用して,海上での観測も並行して行う。この観測は広帯域音響探査システムを評価する意味もあり,得られた知見は実用機の製作へ反映させる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
The Journal of the Marine Acoustics Society of Japan
巻: in press ページ: in press
海洋音響学会2012年度研究発表会講演論文集
巻: 2012年度研究発表会講演論文集 ページ: 53-56
巻: 2012年度研究発表会講演論文集 ページ: 57-60