研究課題/領域番号 |
23686127
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
甘糟 和男 東京海洋大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80452043)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海洋生物調査 / 広帯域音波 / エコーサウンダー / 音響散乱スペクトル / ナンキョクオキアミ |
研究概要 |
現在,一般的に利用されている海洋生物(魚類や動物プランクトンなど)調査用のエコーサウンダーは,狭帯域(ナローバンド)の音波を利用している。狭帯域=扱える情報量が少ないため,海洋生物のエコーからロバストで多くの生物学的情報(サイズ,密度,分類群,行動)を抽出することは非常に難しい。そこで,本研究では,扱える情報量が多い=広帯域(ブロードバンド)の音波が利用できるエコーサウンダー(本研究では,音響探査システムと称す)を開発している。 平成25年度は,これまでに製作してきた試作機を発展させ,より実用的なシステムを製作した。特に,システムを小型して可搬性を高めることを目標とした。プリアンプ,フィルター,データ収録部は小型化し,可搬型のケースにインテグレートした。また,高精度な測定を実現するために,受波器(エコーを受け取るセンサー)内に20 dBのプリアンプを内蔵し,信号対雑音比を向上させた。また,データ収録部には16 bitのADボードを使用し,ダイナミックレンジを広げた。水槽での動作試験は終えたので,今後は現場での応用研究を進めるとともに,必要に応じて改良・修正を加えて完成させる。 別途,前年度までに製作してきた試作機も信号対雑音比を向上させるための改良を施してきた。これらの成果の一部は前述した実用機の製作に反映した。また,東京海洋大学練習船海鷹丸が実施した南大洋での海洋生物調査に応用し,国際的な資源管理対象種であるナンキョクオキアミの観測を行った。広帯域音波によるナンキョクオキアミのエコー観測に初めて成功し,前年度までに確立した信号処理方法によって解析したところ,ナンキョクオキアミのサイズに依存した音響散乱スペクトルを捉えることができた。今後,詳細な解析を進め,サイズ別の密度推定を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システムの製作については,当初の計画どおりに製作できない部分があった。しかし,解決策を見出して研究を進め,目的の達成には支障を与えていない。したがって,おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
広帯域音響探査システムには改良する余地がまだあるがほぼ実用的な域に達した。したがって,今後は応用研究を展開していく。昨年度に引き続き南大洋での観測を計画している。また,海洋生物以外(海底質,噴出ガスなど)も観測対象として考え,どのような応用が可能か模索し,研究を発展させていく。
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