研究課題/領域番号 |
23686132
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 悟 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60422078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超伝導材料・素子 / プラズマ・核融合 |
研究概要 |
商用核融合炉を目指した設計案として機械的接合法を利用した分割型高温超伝導マグネットが提案されている。本研究では、高温超伝導導体の機械的接合法における抵抗発生メカニズムを基礎実験および数値解析によって定量的に分析し、機械的接合の接合構造・接合力負荷法を最適化することで、核融合炉環境下でも低抵抗・再着脱可能な機械的接合が可能であることを実証することを目的とする。さらに電磁力、熱ひずみ等を考慮した構造解析を実施し、分割型高温超伝導マグネットの最適構造設計案を提示する。(1) 機械的接合法の抵抗発生メカニズムの定量化:接合抵抗の主要因は、1) 接合部付近の臨界電流の低下、2) 高温超伝導テープを構成する金属層の抵抗、3) 接触抵抗の3つである。2)は温度・磁場に依存し、3)はHolmの接触理論によれば接点金属の電気抵抗率に依存する(すなわち温度・磁場に依存する)。そこで、温度・磁場を変化させながら、GdBCO高温超伝導テープの機械的ラップジョイントの接合抵抗を実験的に評価し、上記予測が正しいことを確認した。(2) 高温超伝導導体の機械的接合法:2 kA級GdBCO導体を製作し、機械的エッジジョイント試験を実施して、核融合炉マグネット使用条件を満たす接合抵抗が達成できることを実験的に示した。また、30 kA級GdBCO導体を製作し、局所的な臨界電流密度低下を引き起こす応力集中を避ける構造を導入して、機械的ブリッジジョイント試験を実施して低接合抵抗取得に成功した。(3) 電磁力・接触解析(最適接合構造設計): 本年度は、低接合抵抗が実現可能な接合応力を発生させるために必要な構造を検討した。マグネットのセグメントを1つの単位として必要な接合応力を発生させるためには、マグネット体積を著しく増やす必要があり、今後はさらなる分割構造の検討をしつつ、最適接合構造を提案する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械的接合法の抵抗発生メカニズムの定量化については、接合抵抗の各要因を切り分けて分析し、核融合炉環境下での各種導体・接合方法における接合抵抗の予測ができる見通しができている。また、高温超伝導導体の機械的接合法では、30 kA級導体での実証試験を行うことができ、予定以上の進展である。電磁力・接触解析(最適接合構造設計)については、今年度はあまり進展がなかったが、全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
機械的接合法の抵抗発生メカニズムの定量化については、接合抵抗の温度・磁場依存性のデータを引き続き取得するとともに、実験的に得られた接合抵抗から、金属層抵抗、接触抵抗を数値解析を援用して抽出し、Holmの接触理論および金属の電気抵抗の温度・磁場依存性の文献値を用いて説明できる解析モデルを構築する。高温超伝導導体の機械的接合法については、これまでに得られた実験データと接合抵抗の温度・磁場依存性の解析モデルを用いて、核融合炉環境下における接合抵抗の予測と適用性の可否の判断をする。また、電磁力・接触解析(最適接合構造設計)については、さらなる分割構造の導入も考えつつ、引き続き構造解析による最適設計を検討していく予定である。
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