名古屋大学の直線型装置NAGDIS-IIにおいて,タングステンに定常プラズマ(ヘリウムプラズマ)を照射し,ナノ構造が形成されたタングステンに対して,パルスレーザーを用いてパルス的熱負荷を与え,単極アーク/アークを発生させた。発生したアークの分光計測を行い,アークプラズマの温度を計測した。アークスポットからの光を光ファイバで集光して,分光器を介して,検出器としてイメージインテンシファイア付のCCDを用いて計測を行った。分光計測の結果,多数の線スペクトルが観察され,その中からWの発光を抽出した。Wの中性粒子および一価のイオンからの発光を用いて,ボルツマンプロットにより温度を評価したところ,両者はほぼ同程度の温度となり,およそ9500 K程度の温度であることが評価された。さらに,アーク点孤のメカニズムを解明するために,ナノ構造材料の電界電子放出特性を調べた。ヘリウムプラズマ照射により表面構造が変化した場合に,電界電子放出電流が,通常のタングステンに比べて著しく増加することが明らかになった。Fowler-Nordheimプロットの傾きから電界集中係数を算出した結果,ナノ構造材料の電界集中係数は通常の材料と比べて変化がないことが分かった。ナノ構造は,基本的にランダムな方向を向き,密集しているため,電界集中が起こらないが,電子放出点が著しく多くなることにより電界放出電流が増加していることが明らかになった。
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