本研究の具体的な目的は、プラズマ乱流熱輸送に現れる非局所性における様々なスケールの乱流揺動、特に電子温度揺動の時空間構造を明らかにし、その相互作用を解明することである。最終年度である本年度は、本研究の基盤となる核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)で生成される高温プラズマ中の電子温度揺動の測定に成功するべく、開発を進めている相関型電子サイクロトロン放射(correlation Electron Cyclotron Emission: cECE)計測システムにおいて低雑音化などの改良に取り組んだ。同システム内での信号分岐の影響を調べるために、一時的にチャンネル数を16から4に減らしたが、依然として強いノイズ成分しか検出されなかった。LHDプラズマからの電子サイクロトロン放射(ECE)は、cECE計測システムに伝送される以前に既に既存のECE計測システムにも伝送されている。既存のECE計測システムでかろうじて観測されているMHD的な温度揺動成分がcECE計測システムでも見られるかどうか相互相関解析を実施したところ、同様な温度揺動を抽出することはできなかった。このことは、cECE計測システムにECE信号を分岐した時点で既にSN比が非常に小さくなっていることを示唆している。そこで、cECE計測システムにおけるSN比が既存のECE計測システムと比較してどの程度劣化しているか調べたところ、約1/70であることが判明した。乱流に起因する電子温度揺動の強度はMHD的な電子温度揺動のそれと比較して、1桁程度小さいことが予想されている。このことから、抜本的対策として、大口径の受信アンテナを有する専用の受信系を構築することが最善であるとの結論に至った。
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