研究課題
今年度は、主にセスキオキサイド構造を有する透明多結晶サンプルの研究を行った。具体的には、Sc2O3 型の化学構造を有する化合物をベースに、Sc サイトを X 線やガンマ線に対する光電吸収確率を増加させるために、Y、Lu を10-100% の間で置換させ、その特性の変化を詳細に調査した。これらを試行した結果、Yb を 0.3% 程度添加した、Lu2O3 シンチレータが興味深い特性を示した。絶対発光量は 1000 ph/MeV であったが、TOF-PET 等を想定した時間分解能においては、これまでの最高性能を示していた BaF2 シンチレータを凌駕する結果が得られた。蛍光減衰時定数も Yb3+ の電荷移動遷移に基づくサブナノ秒のため、単純なカウンティング用途にも適すると思われる。当該シンチレータには既にいくつかの企業や、研究機関が興味を示しており、今後の産業応用も期待される。また Sc2O3 や Y2O3 にも同様に Yb を添加してみたが、前者では遅い蛍光寿命成分が問題となり、後者では発光量が極めて低かった。これらに Ce3+ や Pr3+ といった 5d-4f 遷移型の発光中心を添加してみたが、ほとんど発光を示さなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究全体の目標としたγ線用Ce:LSOの発光量 30000 ph/MeV、応答速度 100 ns 以内を持つシンチレータの開発は、昨年度度のCe:Gd3Ga3Al2O12 シンチレータで達成された。今後はTOF-PET応用を目指した Yb 添加 Lu2O3 シンチレータの開発を進展させたい。
平成25年度はペロブスカイト系、平成26年度はパイロクロア系を、予定通り順次研究していく。
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http://www.lsse.kyutech.ac.jp/~yanagida/