本研究の目的は、深海底熱水活動域において絶対的な共生関係にある微生物と大型生物の間に働く相互作用(異なる生物が互いを識別しコミュニケーションする機構)を、第三の分子生物学(=グライコミクス)の観点から分子レベルで解明することにある。具体的には、これまでの研究において海洋に見られる様々な共生系に見いだしてきた特異糖鎖の機能解析およびその認識分子(レクチンやTLR)の網羅同定・発現解析・各分子間相互作用の定量化により目的を達成する。 平成26年度は、計画していた目標を全て達成した。本年度は、インド洋および西太平洋の深海底熱水活動域に見られる様々な細胞内共生系(主に大型巻貝や二枚貝)において、共生微生物が有する特異糖鎖を認識する分子を探索した。その結果、宿主生物および共生微生物の種類に応じて、宿主生物が有する糖鎖認識分子の種類や特性が大きくことなることが示唆されている。加えて、本年度は中部沖縄トラフに位置する深海底熱水活動域において、海洋研究開発機構の有する船舶・ROVを用いた調査航海を実施し、複数の細胞外・細胞内共生生物を新規に採取することにも成功した。これらにより、本研究期間全体を通して、細胞外共生および細胞内共生の両者を解析し、深海底における異種生物間相互作用の分子機構を比較・体系化することが世界で初めて可能となった。なお、以上に関連する成果の一部は国内外の学会や国際誌上で報告した。
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