研究課題/領域番号 |
23687008
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩井 優和 独立行政法人理化学研究所, ライブセル分子イメージング研究チーム, 客員研究員 (80553768)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 光環境適応機構 / ヒメツリガネゴケ / 集光アンテナタンパク質 |
研究概要 |
植物は時々刻々と変化する環境ストレスに応答する際、葉緑体チラコイド膜に存在する光合成関連タンパク質を再編成していることが知られているが、その機構の詳細については明らかとなっていないことが未だ多い。多くの植物では、光エネルギーを吸収する集光アンテナタンパク質(LHCII)が重要な働きをしていることが知られている。本研究では、薄暗い環境を好んで生息するが、乾燥と強光にも耐性を持つコケ植物ヒメツリガネゴケを用いて、コケ特有のLHCIIであるLhcb9に着目して研究を行っている。 今年度は、ショ糖密度勾配によるチラコイド膜タンパク質の分離方法を再検討した。その結果、コケ光化学系複合体は比較的安定して存在していることが示唆された。また、遺伝子ターゲッティングによるLhcb9欠損株の作製を行った。Lhcb9欠損株では、光化学系複合体形成が弱くなっていることが分かった。このことから、Lhcb9は複合体形成に重要な因子であることが示唆される。 ヒメツリガネゴケのチラコイド膜タンパク質に関しては、まだほとんど情報がないので、プロテオミクスアプローチによる解析を行った。二次元電気泳動によるタンパク質スポットの分離を行い、質量分析による解析を行い、タンパク質同定を行った。Lhcb9欠損株でも同様に行い、スポットの欠失も確認した。現在、環境ストレスによって、どれだけのスポットが変化するか、またリン酸化状態についても検討を行っている。 更に、遺伝子ターゲッティングによるLhcb9-His株の作製をし、ニッケル吸着カラムによるLhcb9の精製に成功した。Lhcb9-His変異株は、核コード由来のチラコイド膜タンパク質で最初にHis-tag付与が成功した株で、重要な変異株である。今後は、Lhcb9の複合体解析を進め、更に環境ストレスによる状態変化について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に着手した解析法を更に改善し、より精度が上がったことが非常に大きく、今後の解析結果が明確になると思われる。また、チラコイド膜の精製に関しても、解析に適した状態での精製法を確立したので、不必要な人為的要因を排除した解析結果が得られるようになった。また、Lhcb9-His変異株とLhcb9欠損株が完成し、本研究における重要な材料が揃ったことで、今後の研究解析推進に大いに繋がる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Lhcb9-His変異株を用いて、複合体解析を行う。解析の主な手法に二次元電気泳動解析とゲルろ過クロマトグラフィー、またショ糖密度勾配超遠心法を駆使し、詳細な解析結果を得ることを目指す。また、環境ストレスによって複合体形成の変化を見出す、環境ストレス条件を検討し、サンプルの収集を早急に行うことについても重視する。更に、コケ特有のLHCIIであるLhcb9の光環境適応機構への重要性を明らかにする。更に、Lhcb9欠損株を用いることで、複合体形成の変化と環境ストレスに対する耐性も明らかにすることで、コケ植物が持つ光環境適応機構の謎に迫る。
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