研究課題/領域番号 |
23687010
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
笠原 和起 独立行政法人理化学研究所, 精神疾患動態研究チーム, 副チームリーダー (50344031)
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キーワード | メラトニン / AANAT / HIOMT / コンジェニック化 / 概日リズム / 光周性 |
研究概要 |
マウスをモデル動物としてメラトニンの生理学的な役割を明らかにするために、本研究ではまず、C56BL/6J系統(メラトニン合成系の最終酵素HIOMTと最後から2番目の酵素AANATとの両方の活性を失っている)とMSM/Ms系統(両酵素とも活性を保持している)のマウスを掛け合わせ、メラトニンを合成できるマウス(MEL+)、メラトニンを作れないが前駆体のNASは合成できるマウス(NAS+)、どちらも作れないマウス(none)を作製した。遺伝的な背景が均一となるように、C56BL/6J系統またはMSM/Ms系統にコンジェニック化を行った。10回以上のバッククロスを行い、ゲノムワイドに設定した80~100カ所のマーカーを調べて、コンジェニックが完了したことを確認した。得られた各種の遺伝子型のマウスから、夜間に松果体および血漿をサンプリングしてメラトニンを測定した。その結果、想定通り、遺伝子型によってメラトニンが生合成できる/できないことを確認した。C56BL/6Jコンジェニックマウスに関しては、予備的に3群のマウス(MEL+、NAS+、none)の輪回し行動解析を行い(合計16匹)、明暗周期下における行動パターン、恒暗条件下における概日時計のフリーラン周期等を調べた。予想通りであるが、メラトニン合成能は影響を与えないことが分かった。ただし、きわめてわずかな違いがあるのではないかという期待もあり、来年度以降、匹数を増やしてさらに詳細に調べる予定である。また、来年度以降の解析に供することができるように、3群のマウスを多数増やし始めた。ここで開発したコンジェニックマウスが、多くの研究者に利用してもらえるよう、理化学研究所バイオリソースセンターに寄託した(すでに2件の分与希望があった)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定通り、マウスのコンジェニック化が順調に完了することができた。マウスの繁殖能力等にも問題なく、メラトニン合成能の異なるマウスを現在増やしている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したマウスを学会等で話したところ、多くの研究者の興味を引くことが分かり、このマウスを分与して広く共同研究を行うことが、本研究課題の最終的な目標でもあり課題名でもある「哺乳類におけるメラトニンおよびその前駆体の生理学的意義の解明」に早く有効的につながるだろう。本研究課題の当初の研究計画を変更することはないが、それ以上の解析が可能になり、また、自分の研究課題の遂行にフィードバックできるだろう。
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