研究概要 |
Atg7の結晶構造を決定し,Atg7がN末端ドメイン(NTD)とC末端ドメイン(CTD)が短いリンカーでつながれた構造を持つことを明らかにした.Atg7NTDは既知のE1にはないユニークな構造を持ち,塩基性面でE2酵素Atg3と結合することを明らかにした.一方,Atg7CTDはE1酵素に保存されたアデニル化ドメイン(AD)と,Atg7に固有の最C末端ドメイン(ECTD)からなることを示した.さらにAtg7CTD-Atg8-ATP複合体について結晶構造を,またAtg7のECTDのテール部分とAtg8との複合体についてNMR構造を決定した.構造情報に基づき変異体Atg7およびAtg8を作製し,in vitroおよびin vivo両面での機能解析を行った結果,Atg7はまずECTDのC末端にあるフレキシブルな領域でAtg8を捉えたのち,Atg7のADへとAtg8を受け渡すという少なくとも二段階の認識を経てAtg8の活性化を行うことを明らかにした.Atg7により活性化されたAtg8は,つぎにAtg3へと受け渡される.この受け渡し反応にはAtg3の認識に関わるAtg7NTDが必須であるが,Atg7はホモダイマーを形成するため,NTDを2つ持ち,したがってAtg3も二分子結合することになる.Atg7により活性化されたAtg8が,2つのAtg3分子のどちらに効率的に受け渡されるのかを,一方のNTDのみ欠いたヘテロ二量体化Atg7を用いて検証した結果,Atg8は自身が結合しているAtg7分子に結合したAtg3(シス)ではなく,自身が結合しているAtg7分子と二量体を形成しているもう一分子のAtg7に結合したAtg3(トランス)へと受け渡されることが明らかとなった.これらの反応機構は既知のE1とは全く異なる新しいものであり,オートファジー特異的制御剤開発のための基盤となりうる.
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