研究課題
E1酵素Atg7は互いに相同性の低い2つのE2酵素Atg3およびAtg10の両方を認識するが,これは他のE1では見られないユニークな特徴である.今回Atg7-Atg10複合体およびAtg7-Atg3複合体の結晶構造を決定した.構造および構造に基づいた変異体解析の結果,Atg3とAtg10は同じ領域を用いてAtg7のほぼ同じ領域に結合すること,細かい相互作用様式は異なることを明らかにした.昨年度に決定したAtg7-Atg8複合体構造と合わせることで,Atg8のAtg7からAtg3への受け渡しはトランスの機構で進むことが構造からも示された.またAtg12のAtg7からAtg10への受け渡しについても構造および機能解析の両面からトランスで進むことが示された.またin vitroでの変異体解析の結果,Atg7はAtg8とAtg12を非選択的にAtg3およびAtg10へと受け渡すことが示された.これは従来の定説に反するものであり,今後のAtg7の機能研究に一石を投じるものである.Atg12はAtg10に渡された後,Atg5と結合体を形成する.NMRおよび変異体解析の結果,Atg10はAtg5を直接認識することでE3非依存的に結合反応を担うことが示された.Atg12-Atg5結合体はAtg3と相互作用することでAtg8とPEの結合反応を促進する.Atg12-Atg5結合体の結晶構造を決定し,Atg12はAtg3の結合モジュールとして機能することを明らかにし,Atg8結合系のE3様酵素としての機能の一端を明らかにした.
1: 当初の計画以上に進展している
Atg7-Atg3複合体およびAtg7-Atg10複合体の構造決定に成功し,構造情報に基づいた変異体解析の結果,予想外な転移反応のあいまい性を発見するなど,大幅な進展が見られた.
Atg7によるAtg3, Atg8およびAtg10の認識機構が明らかとなったため,最後に残されたAtg12の認識機構を明らかにする.またこれまでの構造情報を総動員して機能解析を進め,Atg8がAtg3へ,Atg12がAtg10へと受け渡される分子機能解明を進める.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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