研究課題
本研究は真核生物における翻訳開始の最初のステップにおいて中心的な役割を果たす翻訳開始因子eIF2とその相互作用因子の立体構造解析を進め、生化学的な解析と併せて、eIF2の機能発現のメカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度はeIF2特異的なグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能するeIF2Bの立体構造解析に成功し、モデルの構築を終了したが、本年度は得られたeIF2Bの立体構造に基づき、eIF2との相互作用部位を同定する研究を進めた。また、これまで困難であった酵母由来の内在性のeIF2の大量調製法を確立した。翻訳開始因子eIF2Bは5つのサブユニット(α―ε)からなり、eIF2BεのC末端側に位置するHEATドメインがGEF活性を担っていると考えられている。これまでに5つのサブユニットがどのような複合体を形成しているかの詳細は不明であった。また、eIF2との相互作用様式についても詳細は不明であった。本年度の生化学的な解析により、eIF2BαとeIF2Bβ、eIF2Bδからなる調節サブコンプレックスに形成されているくぼみでeIF2αと相互作用することが可能なことを明らかにした。また、酵母より精製したeIF2を用いて生化学的な実験をおこない、eIF2γはeIF2BγとeIF2Bεからなる活性サブコンプレックスと広い範囲で相互作用していることを明らかにした。このように同定したeIF2BのeIF2との相互作用部位はeIF2のリン酸化の有無でどのように変化するかを現在実験中であり、eIF2Bの立体構造とこれらのeIF2-eIF2Bの相互作用の生化学的な解析を併せて論文として報告する予定である。また、eIF2を含まない翻訳開始に関連する因子の1つであるeIF2Aの立体構造についても決定できたため、これを発表論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
重要なeIF2との相互作用因子であるeIF2Bの立体構造の決定に成功し、eIF2とeIF2Bがどのように相互作用しているかについて、詳細なデータがそろいつつある。また、eIF2の大量調製法に成功し、eIF2そのものを含む複合体についても立体構造解析も進めていくことが可能な状態にある。
生化学的な解析手法により、eIF2のリン酸化の有無によってeIF2Bとの相互作用様式がどのように変化しているかを明らかにする。このメカニズムの詳細を明らかにするため、X線結晶構造解析法などにより立体構造解析を進める。また、eIF2-GTP-Met-tRNAiの3者複合体などの構造解析も進める。
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Journal of Structural and Functional Genomics
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10.1007/s10969-014-9177-y