研究概要 |
マウスに由来するNPPl細胞外ドメインのN末端にNPP2の分泌シグナル配列を,C末端にTARGETタグをそれぞれ付加した"分泌型"NPPIの発現コンストラクトを作成した.発現コンストラクトをHEK293S GnT1-細胞にトランスフェクションし,限界希釈法によりクローニングした.pNP-TMPを基質とした酵素活性測定により培養液中のNPP1発現量を評価し,NPP1高発現株を取得した.大阪大学高木研究室との共同研究により,得られたHEK293S GnT1-細胞をBello Cell用いて大量培養し,NPP1を含む培養上精を得た.得られた培養上精からP20.1セファロース,および,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを用いてNPP1を高純度に精製した.精製NPPIを用いて結晶化スクリーニング,結晶化条件の最適化を行い,AMPとの共結晶を得た.大型放射光施設SPring-8にてX線回折データを収集し,SeMet置換体を用いたSAD法により,位相決定に成功した.現在モデル精密化を進めている.AMP以外のヌクレオチド存在下で結晶化スクリーニングを行い,共結晶を作成し,大型放射光施設SPring-8にてX線回折データを収集した.東北大学青木研究室との共同研究により,質量分析を用いて酵素反応産物を定量することによりNPP1の基質特異性を検討した.NPP2との構造比較を行い,NPP1とNPP2の間の機能の差異を生み出しているアミノ酸残基を推測し,それらのアミノ酸残基の変異体を哺乳類HEK293S GnT1-細胞で発現させ,P20.1セファロースを用いて精製し,酵素活性測定を行った.
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今後の研究の推進方策 |
NPPファミリー酵素の基質特異性決定に寄与すると考えられている触媒ドメインのループ領域を削除した変異体NPP1がNPP2のようなlysoPLD活性を示すかどうかを検討する.過去の研究から,NPP1の変異がヌクレオチド加水分解活性の低下とそれに伴うGACIなどの骨疾患と関連することが報告されているので,これらの病因変異が立体構造上にどのように位置し,疾患を引き起こしているのかを考察する.これまでの結果をまとめ論文として発表する.
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