研究課題/領域番号 |
23687015
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
沼田 倫征 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (10401564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | tRNAプロセシング / tRNA修飾 / 修飾ヌクレオシド / アンチコドン / 結晶構造解析 |
研究概要 |
本研究では、tRNAのプロセシング機構を解明する一環として、tRNA修飾酵素とtRNAとの複合体の結晶構造解析を行い、tRNAの認識機構および修飾反応機構の解明を目指している。そこで、tRNA修飾酵素CsdLと基質tRNAとの結晶構造解析を試みた。CsdLはtRNAの37位に存在するN6-スレオニルカルバモイルアデノシン(t6A)を脱水環化してサイクリックt6Aへと変換する酵素である。まず、CsdLの発現系を構築し、各種クロマトグラフィーを用いて精製した。調製したCsdLとtRNA(37位にt6Aを持ったネイティブtRNA)を用いて結晶化を行ったところ、良質な結晶が得られた。また、CsdL単独の結晶を得ることにも成功した。まず、CsdL単独の結晶構造をSAD法により決定した。続いて、CsdLとtRNAとの複合体の結晶構造を分子置換法により決定した。また、CsdLはATP依存的に修飾反応を触媒することから、CsdL-ATP複合体の結晶構造も決定した。一連の構造を解析した結果、CsdLの活性部位を同定し、CsdLはtRNAのt6A部分を特異的に認識していることが分かった。また、ATPがt6Aの近傍に結合することが分かり、CsdLは修飾過程においてt6Aをアデニル化して活性化することが示唆された。現在、変異体解析を進めている。一方、ロイシンtRNAなどのアンチコドン1字目のウリジンは、5-タウリノメチルウリジンへと変換されている。この修飾には2種類の酵素(MTO1とGTPBP3)が関与する。これまでに、GTPBP3を調製したが、結晶は得られていない。一方、MTO1に関しては、可溶性画分への発現が困難であることが分かった。そこで今年度は、MTO1とGTPBP3の真正細菌ホモログを対象として、その複合体の結晶化を目指す。これまでに、MTO1ホモログとGTPBP3ホモログをそれぞれ精製した。得られたサンプルを用いて複合体の結晶化を試みたところ、複合体結晶は得られたものの分解能が悪く、現在のところ、構造を解析するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の目的タンパク質を発現・精製し、結晶化に結びついている。また、修飾酵素とtRNAとの複合体の結晶構造の決定にも成功していることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
MTO1ホモログとGTPBP3ホモログとの複合体の結晶化については結晶化条件を改善し、分解能の高い良質な結晶の作製を目指す。また、CsdLに関しては、変異体解析と生化学的解析を進め、反応機構の解明を目指す。
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