昨年度までに、GPIアンカー型レポータータンパク質の細胞表面発現が低下するC41変異株について、責任遺伝子の同定を行い、ドリコールリン酸マンノース利用に関わる遺伝子MPDU1が責任遺伝子であることを明らかにした。さらに、GPIマンノース転移酵素遺伝子の一つであるPIGVによってもC41の一部の表現型が回復した。今年度はさらにこの理由について解析を行い、PIGVが3つのGPIマンノース転移酵素のうち、基質であるドリコールリン酸マンノースの制限下において、律速段階となっていることを示した(Hirata et al (2013) J. Biochem.)。また、半数体細胞と遺伝子トラップ法を利用したGPIアンカー型タンパク質の輸送変異細胞群の取得を行い、変異細胞群から遺伝子変異部位の同定を網羅的に行った。その結果、GARPコンプレックスと呼ばれる4つの因子のうち、VPS51、VPS52、VPS54の3つの遺伝子上にトラップベクターが有意に挿入されていることがわかった。GARPコンプレックスはエンドソーム由来の輸送小胞をトランスゴルジネットワーク(TGN)に融合させる際に必要なtethering factorである。これらの遺伝子について、RNAiによるノックダウン、さらにCRISPR/Cas9によるノックアウトを行い、タンパク質順行輸送の遅延、特にゴルジ体から細胞膜への輸送遅延を引き起こすことを確認した。これらの結果より、エンドソーム-TGNの逆行輸送阻害がTGN-細胞膜の順行輸送に影響を与えることを明らかにした。 高発現によってGPIアンカー型タンパク質を細胞膜から遊離させる機能未知遺伝子についても解析を行い、GPIアンカーを切断する新規な酵素遺伝子であることを明らかにしつつある。ノックアウトマウスの作製を行い、胎生致死を示すことが分かった。
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